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共創事例

宇宙機関が段階払いで開発を支え、スタートアップのロケットと宇宙船でISSへの補給を担う

NASA(米航空宇宙局、National Aeronautics and Space Administration)(自治体・公的機関) × SpaceX(Space Exploration Technologies Corp.)(スタートアップ)

米国カリフォルニア州ホーソーンスケール枠組み NASA Commercial Orbital Transportation Services(COTS)計画情報確認日 2026年10月12日

スペースシャトルの退役を控えたNASAは、2006年、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物輸送を民間に委ねるCOTS(Commercial Orbital Transportation Services)計画で、設立4年・従業員100人未満のSpaceXと資金付きのSpace Act Agreementを結んでいます[1]。NASAは節目ごとの固定額払いで最終的に3億9,600万ドルを支払い、SpaceXは約4億5,400万ドルを自己資金で負担してFalcon 9ロケットとDragon宇宙船を開発し、2012年5月に民間宇宙船として初めてISSに結合しています[1][8]。実証完了前に結ばれた補給サービス契約(CRS)は2030年まで延長され、2026年10月には35便目の打上げが予定されています[15][16]。

1共創の構造図解:共創プロジェクトの形

宇宙機関が段階払いで開発を支え、スタートアップのロケットと宇宙船でISSへの補給を担う:共創の構造(NASA、SpaceX)プロジェクト全体の段階探索PoC共同開発事業化スケールBefore|起点During|共創After|成果ANASA1ニーズ・シーズシャトル退役後のISS補給手段を低コストで確保し、米国の商業宇宙産業を育てたい2提供リソース段階払いの開発資金3億9,600万ドル、技術助言とNASA施設、ISSという実証先、補給契約という顧客の約束ANASAの成果5獲得成果確認できた成果民間側が過半を負担する形で2系統の補給手段を確保。開発費はNASA推計より大幅に低く、補給便は35便目へ今後の目標・期待2030年のISS退役まで補給を継続。輸送手段がNASA以外の顧客にも広がることBSpaceX1ニーズ・シーズFalcon 9とDragonを開発し、実績のない段階で資金と最初の顧客を得たい2提供リソース内製の開発・製造体制、Falcon 1の経験、自己資金約4億5,400万ドル、開発の速さBSpaceXの成果5獲得成果確認できた成果COTS完了と補給・有人輸送の契約獲得。Falcon 9打上げ約620回、2025年売上186.7億ドル、2026年上場今後の目標・期待Falcon 9からStarshipへの移行(Falcon 9の打上げは減少見込み)3共同活動固定額のマイルストーン払い協定で、NASAが資金と技術助言、SpaceXが開発と自己資金を出し、2012年にISSへ到達。補給契約へ移行4成果物Falcon 9とDragon、ISS実証(2012年)、補給契約CRS・CRS-2(35便目へ)、有人輸送(2020年〜)

Before起点

ANASA

① ニーズ・シーズシャトル退役後のISS補給手段を低コストで確保し、米国の商業宇宙産業を育てたい
② 提供リソース段階払いの開発資金3億9,600万ドル、技術助言とNASA施設、ISSという実証先、補給契約という顧客の約束

BSpaceX

① ニーズ・シーズFalcon 9とDragonを開発し、実績のない段階で資金と最初の顧客を得たい
② 提供リソース内製の開発・製造体制、Falcon 1の経験、自己資金約4億5,400万ドル、開発の速さ

During共創

③ 共同活動固定額のマイルストーン払い協定で、NASAが資金と技術助言、SpaceXが開発と自己資金を出し、2012年にISSへ到達。補給契約へ移行
④ 成果物Falcon 9とDragon、ISS実証(2012年)、補給契約CRS・CRS-2(35便目へ)、有人輸送(2020年〜)

After成果

ANASAの成果

⑤ 獲得成果確認できた成果民間側が過半を負担する形で2系統の補給手段を確保。開発費はNASA推計より大幅に低く、補給便は35便目へ今後の目標・期待2030年のISS退役まで補給を継続。輸送手段がNASA以外の顧客にも広がること

BSpaceXの成果

⑤ 獲得成果確認できた成果COTS完了と補給・有人輸送の契約獲得。Falcon 9打上げ約620回、2025年売上186.7億ドル、2026年上場今後の目標・期待Falcon 9からStarshipへの移行(Falcon 9の打上げは減少見込み)

プロジェクト全体の段階

探索PoC共同開発事業化スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:スケール COTS協定は2012年5月の最終実証C2+で全40のマイルストーンを完了し、同年8月にNASAが達成を確認して終了しています[1]。その後は固定価格の補給サービス契約(CRS、2008年発注)とCRS-2契約(2016年発注、2030年まで延長)による補給が続き、2026年10月13日に35便目の打上げが予定されています[13][15][16]。有人輸送も2020年から続いており[14][17]、開発協定としての共創は終わり、サービス契約として定着・拡大している段階と判断しています。

2背景と各組織の狙い

2003年2月のスペースシャトル・コロンビア事故の翌年、ブッシュ大統領は2004年1月の「宇宙探査ビジョン」でシャトルの退役と月・火星探査への転換を打ち出し、ISSへの補給は民間に委ねる構図になりました[1]。議会は2005年のNASA授権法で商業化計画の策定を指示し、2005年4月に就任したグリフィン長官は、5億ドルの固定予算で商業輸送の開発を促すCOTS計画を立ち上げています[1][5]。

SpaceXは2002年にイーロン・マスク氏が設立したスタートアップです。2006年8月の採択時点で従業員は100人未満、最初のロケットFalcon 1は3回の失敗を経て2008年9月に初めて軌道に到達する段階でした[1]。

NASAはCOTSを調達ではなく「投資」と位置づけました。ベンチャーキャピタリストを助言者に迎え、技術力だけでなく資金調達能力を重視して審査し、企業側に自己資金の投入(skin in the game)を求めています[1]。

3提供資源と役割

ANASA(米航空宇宙局、National Aeronautics and Space Administration) 自治体・公的機関・ワシントンD.C.(本部)。COTS計画の事務所はテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター ・ 公式サイト

米国の宇宙開発を担う政府機関。COTS計画は2005年11月にジョンソン宇宙センターに設けた商業乗員・貨物プログラム事務所(C3PO)が運営し、予算は5億ドルの固定額でした[1]。

役割
投資家兼技術助言者、実証後の最初の顧客
① ニーズ・シーズ
2003年のコロンビア事故後、2004年の「宇宙探査ビジョン」でシャトル退役と月・火星探査への転換が決まり、ISSへの補給手段を別に確保する必要がありました[1]。GAOは、2010年のシャトル退役後、2010〜2015年に約40トンの補給不足が生じると指摘しています[5]。NASAは2005年のNASA授権法で商業化計画の策定を指示され、民間の輸送サービスを安く確保すると同時に、米国の商業宇宙産業を育てることを狙いとしました[1][5][19]。
② 提供リソース
COTSの固定予算5億ドルから、SpaceXに最大2億7,800万ドル(22のマイルストーン)、2011年度の追加予算で1億1,800万ドル(18のマイルストーン)を段階払いで提供しました[1][4]。ジョンソン宇宙センターのプロジェクト・エグゼクティブによる技術助言、ISSの安全審査の手ほどき、シャトル2便でのDragon用センサーの軌道上試験、打上げ監視レーダーの提供、エイムズ研究センターの耐熱材PICAを基にしたPICA-Xの共同開発、マーシャル宇宙飛行センターの風洞試験(有償の協定)を行いました[1]。ISSを実証先として提供し(利用は任意)、実証完了前の2008年12月に固定価格の補給契約を発注して、最初の顧客となりました[1][20]。
③ 共同活動での担当
マイルストーンの達成を審査して支払い、技術助言と施設を提供した。開発遅延時も技術的進捗がある限り協定を続け、C2・C3の統合などSpaceXの提案を協議して協定を修正した[1]。
⑤ 確認できた成果
  • SpaceXとOrbitalの2系統の輸送手段を、COTS総額7億8,800万ドルの投資で確保。開発費の過半は民間側が負担した[1][6]
  • Falcon 9の開発費はNASAのモデル推計(従来方式で約40億ドル、商業方式でも約17億ドル)に対し、NASAが検証したSpaceXの実績はFalcon 1と合わせて約3億9,000万ドル[2][3]
  • シャトル退役(2011年7月)から約1年後の2012年10月に米国からの補給便を再開し、2026年10月に35便目を予定[1][9][16]
  • 同じ方式を有人輸送に適用し、2020年5月に米国からの有人打上げを再開[11][14]
  • GAOは2009年、支出の約95%がマイルストーン払いで管理費が小さいことや、プロジェクト管理の手法を守っていることを評価[5]
⑤ 今後の目標・期待
  • 2030年に予定するISS退役まで、CRS-2契約で補給を継続[15]
  • 開発した輸送手段がNASA以外の顧客にも使われ、米国の商業宇宙産業と打上げ価格の競争力が高まること[1]
実現したいこと技術開発・実用化生産性・業務品質の向上
持っている資源資金専門人材・ノウハウ実証場所・施設技術・知財顧客接点・顧客基盤

BSpaceX(Space Exploration Technologies Corp.) スタートアップ・テキサス州スターベース(本社)、カリフォルニア州ホーソーン(開発・製造拠点) ・ 公式サイト

2002年にイーロン・マスク氏が設立。2006年のCOTS採択時は従業員100人未満で、最初のロケットFalcon 1はまだ軌道到達前でした[1]。2026年5月の上場申請書類では、従業員2万2,000人超、2025年の売上高186億7,400万ドル(純損失49億3,700万ドル)、Falcon 9の打上げ約620回、DragonのISS訪問50回超と記載しています[17]。2026年6月にNasdaqに上場しました[18]。本ページでは共創開始時の位置づけに合わせてスタートアップとして分類しています。

役割
ロケット・宇宙船の開発主体、のちの輸送サービス提供者
① ニーズ・シーズ
当時のSpaceXはFalcon 1の開発中で、3回の失敗を経て2008年9月に初めて軌道到達に成功する段階でした[1]。Falcon 9とDragonを開発して、低軌道への輸送を事業にするための資金と、最初の顧客が必要でした。ショットウェル社長は当時の最大の課題を、Falconの能力を実証する前に投資家を探し、打上げサービスを買ってもらうことだったと振り返り、「会社を生かし続け、苦しい時期に給料を払い続けることに集中していた」(編集部訳)と述べています[1]。
② 提供リソース
Falcon 1で得た開発経験と、エンジンを含む内製体制。ホーソーンの工場(2008年にエルセグンドから移転)とテキサス州マクレガーの試験場、ケープカナベラルの射場[1]。既製部品の活用と少人数組織による開発の速さ[1]。マスク氏の人脈による資金調達で、2009年3月までに資金面の3つのマイルストーンを達成し、COTS全体で約4億5,400万ドルを自己負担しました[1]。
③ 共同活動での担当
Falcon 9とDragonの設計・製造・試験と実証飛行を実施。NASAの補給需要を踏まえて中間型のFalcon 5をやめてエンジン9基のFalcon 9に進み、ISSとの通信装置や耐熱材を自社開発し、C2・C3の統合をNASAに提案した[1]。
⑤ 確認できた成果
  • COTSの全40マイルストーンを完了し、NASAから3億9,600万ドルを受領[1]
  • 2008年12月に12便・16億ドルのCRS契約を獲得。2016年のCRS-2契約(最低6便)は2030年まで延長され、2024年11月時点で28億ドルが執行済み[6][13][15]
  • 2014年に最大26億ドルの有人輸送契約を獲得し、2020年5月のDemo-2で民間として初めて宇宙飛行士をISSへ輸送[11][14]
  • 2026年3月末時点でFalcon 9の打上げ約620回、DragonのISS訪問50回超。2025年の売上高186億7,400万ドルのうち約5分の1が米連邦政府機関向け[17]
  • 2026年6月にNasdaq上場。公開価格135ドルで約750億ドルを調達し、時価総額は約1.78兆ドル(報道値)[18]
⑤ 今後の目標・期待
  • Falcon 9の打上げは今後減少し、完全再使用型のStarshipに移行する見込み[17]
実現したいこと技術開発・実用化新商品・サービス開発販路・顧客の拡大
持っている資源技術・知財専門人材・ノウハウ生産設備・加工能力資金

4共同活動③

2006年8月18日、NASAはSpaceXとRocketplane Kistler(RpK)の2社と資金付きのSpace Act Agreement(SAA)を結びました。SpaceX分は最大2億7,800万ドルで、22のマイルストーンの達成をNASAが確認した後に支払う固定額の協定です。費用超過は企業側の責任で、NASAの負担には上限があります[1][4][5]。資金調達の節目を初期に置き、民間側が資金を集められなければNASAが早期に撤退できるようにしています[1]。SAAは連邦調達規則(FAR)の対象外で、知的財産は企業側に残り、要件はISSの安全・インタフェース要件を除いて最小限です[1][4][5]。RpKは資金調達の節目を達成できず2007年10月に協定を打ち切られ、残額は2008年2月にOrbital Sciencesに再配分されています[1][5]。

NASAはジョンソン宇宙センターのプロジェクト・エグゼクティブを通じて技術助言を行いました。統合スケジュールの導入やISS安全審査の手ほどき、シャトル便でのDragon用センサーの軌道上試験、耐熱材PICA-Xの共同開発などです[1]。

開発は当初計画から約2年半遅れましたが、NASAは技術的進捗がある限り打ち切らない方針をとり、2011年度には議会の追加予算から1億1,800万ドル・18のマイルストーンを追加しました[1]。2010年6月にFalcon 9が初飛行し、12月のC1でDragonが軌道から回収されています[1]。2012年5月22日打上げの最終実証C2+で、25日にISSの乗組員がロボットアームでDragonを捕獲しました[1][7][8]。NASAの支払総額は3億9,600万ドル、SpaceXの自己資金は約4億5,400万ドルで、民間側が過半を負担しています[1]。

実証完了に先立つ2008年12月、NASAは固定価格の補給サービス契約(CRS)を発注しました。SpaceXは12便で16億ドル、Orbitalは8便で19億ドルです[1][6][20]。2012年10月7日のCRS-1が最初の契約便です[9][10]。

5成果物と成果④⑤

成果物

  • Falcon 9ロケット(2010年6月初飛行)とDragon宇宙船(2010年12月のC1で軌道からの回収に成功)[1]
  • COTS最終実証C2+(2012年5月22〜31日)。民間宇宙船として初めてISSに結合[1][7][8]
  • 補給サービス契約CRS(2008年12月、12便・16億ドル)と最初の契約便CRS-1(2012年10月、882ポンドを輸送し冷凍試料を含む1,673ポンドを回収)[6][9][10][20]
  • 有人輸送契約(2014年9月、最大26億ドル)とCrew Dragonの有人初飛行Demo-2(2020年5月30日)[11][14]
  • CRS-2契約(2016年1月、3社・各最低6便)。2030年まで延長され、2026年10月に35便目を予定[13][15][16]

開発費の比較は、NASAがNASA・空軍費用モデル(NAFCOM)で2010〜2011年に行った推計です。従来のNASA方式で39億7,700万ドル、商業的な開発方式で16億9,500万ドル(いずれも2010年度ドル)という初回推計に対し、SpaceX訪問後の更新推計では固定価格方式で4億4,300万ドルという値も示されています。NASAは「予算見積もりではない」と注記しています[2]。SpaceXの実績約3億9,000万ドルはNASAが検証した値として同社の議会証言に記載されています[3]。

未確認・留意点
  • SpaceXの自己資金約4億5,400万ドルはNASAの史料の記載で[1]、SpaceX側の会計資料では確認できません
  • 2011年の下院公聴会資料は、開発費を除いた1ポンド当たりの輸送費でCRS(26,770ドル)がシャトル(21,268ドル)を上回るとの試算も示しています。開発費を含めるかどうかで比較の結論が変わります[4]。同資料はCOTS追加予算を各社1億2,800万ドルとしていますが、本ページはNASA史料の最終値1億1,800万ドルを採用しています[1][4]
  • NASAの史料は、COTS提案時の価格は拘束力がなく、CRS契約の価格は提案時より大きく上昇したと記していますが、具体額は示されていません[1]
  • SpaceXのISS関連の売上は非開示で、上場申請書類には米連邦政府機関向けが2025年売上の約5分の1とだけ記載されています[17]
  • CRS契約の便数と金額はその後の追加発注で変動しており、累計の契約額は未確認です。2024年11月時点でCRS-2でSpaceXに28億ドルが執行済みとされています[15]
  • 2015年6月のCRS-7便は打上げ中に失われ、貨物を喪失しています[12]
  • SpaceXは2024年にテキサス州法人に移行し、本社所在地をテキサス州スターベースとしています[17]。本事例の主な開発地は2008年に移転したホーソーンの工場で[1]、region はホーソーンとしています
  • 2026年6月の上場の調達額・時価総額は報道値で、SEC書類での最終的な公開条件は未確認です[18]

6組み合わせの意味編集部の考察

考察

この共創の中心は、政府機関が「発注者」ではなく「投資家」として振る舞った点にあると考えられます。固定額のマイルストーン払いで費用超過の責任は企業側に移り、NASAの財政リスクには上限が付きました[1]。企業側は知的財産と設計の自由を保ち、既製部品の活用や内製化といった自社流の開発を進められました[1]。NASAの費用モデルは、Falcon 9を従来のNASA方式で開発した場合を約40億ドル、商業的な方式でも約17億ドルと推計しましたが、NASAが検証したSpaceXの実績はFalcon 1と合わせて約3億9,000万ドルでした[2][3]。NASAの史料は「最大10分の1」と記しています[1]。

もう一つの要点は、NASAが「将来の顧客」であることを示した意味です。SAAは実証の協定で、サービスの購入を保証しません。RpKは、NASAが後続の補給契約を約束できないことを理由に投資家を集められず脱落しました[1]。NASAは実証完了前の2008年12月にCRS契約を発注し、結果としてSpaceXの資金調達を支えています。NASAの史料は教訓として、購入を約束する意思がなければ企業が金融市場から資金を集めることを期待すべきではないと整理しています[1]。

ショットウェル氏は「NASAの支援がなければ今日の会社にはなっていない。走るのではなく、足を引きずりながら世界を変えようとしていただろう」(編集部訳)と述べています[1]。スタートアップの技術と速さに、政府の資金・技術助言・顧客としての約束が結び付いた形とみられます。

7他社への応用編集部の考察

考察

この型は、公的機関や大企業が、実績のないスタートアップの技術に対し、調達ではなく段階的な投資として関わる場合に応用できると考えられます。鍵になるのは、支払いを客観的な節目に結び付けて上限を固定すること、資金調達の節目を初期に置いて撤退条件を決めておくこと、知財と要件を相手側に残すこと、実証後にサービスを買う意思を早い段階で示すことだと推察できます[1]。NASAは、新しいロケットの実用化は平均で当初計画より27か月以上遅れるとして、遅延を織り込んでいました[1]。

一方、留意点もあります。開発は約2年半遅れ、2015年にはCRS-7便で貨物を失う事故も起きています[1][12]。NASAは複数社に投資して冗長性を確保し、商業貨物プログラムは「貨物輸送機の喪失を織り込んで設計した」(編集部訳)と述べています[1][12]。また、COTS提案時の価格は拘束力がなく、CRS契約の価格は提案時より大きく上昇したとNASAは記録しています[1]。下院の公聴会資料は、開発費を除いた1ポンド当たりの輸送費ではCRSがシャトルを上回るとの試算も示しています[4]。開発費の節約と運用時の価格は分けて評価することが望ましいでしょう。

成立に必要な条件

  • 支払いを客観的な節目に結び付け、上限を固定すること(費用超過は企業側の責任)[1]
  • 資金調達の節目を初期に置き、企業が自己資金を集められない場合の撤退条件を決めておくこと[1]
  • 知的財産と要件を企業側に残し、安全など譲れない要件に限って監督すること[1]
  • 実証後にサービスを買う意思を早い段階で示し、企業の資金調達を支えること[1]
  • 開発の遅延と失敗を織り込み、複数の相手に投資して冗長性を確保すること[1][12]
  • 開発費の節約と運用時の価格を分けて評価すること[1][4]

8出典

  1. [1]Commercial Orbital Transportation Services: A New Era in Spaceflight (NASA/SP-2014-617)
    NASA・自治体・公的機関の資料・英語・公表日 2014年・確認日 2026年10月12日・NASAの公式史料(146ページ)。COTS計画の経緯、資金、マイルストーン、教訓を記載
  2. [2]Falcon 9 Launch Vehicle NAFCOM Cost Estimates
    NASA・自治体・公的機関の資料・英語・公表日 2011年8月・確認日 2026年10月12日・NASA副長官室(政策担当)の推計資料。金額は2010年度ドル
  3. [3]Statement of Gwynne Shotwell, President, SpaceX, before the Subcommittee on Space and Aeronautics
    SpaceX(米下院科学・宇宙・技術委員会への書面証言)・その他・英語・公表日 2011年5月26日・確認日 2026年10月12日
  4. [4]Hearing Charter: NASA's Commercial Cargo Providers; Are They Ready to Supply the Space Station in the Post-Shuttle Era?
    米下院科学・宇宙・技術委員会 宇宙・航空小委員会・自治体・公的機関の資料・英語・公表日 2011年5月26日・確認日 2026年10月12日
  5. [5]NASA: Commercial Partners Are Making Progress, but Face Aggressive Schedules to Demonstrate Critical Space Station Cargo Transport Capabilities (GAO-09-618)
    米国会計検査院(GAO)・自治体・公的機関の資料・英語・公表日 2009年6月16日・確認日 2026年10月12日
  6. [6]Commercial Cargo: NASA's Management of Commercial Orbital Transportation Services and ISS Commercial Resupply Contracts (IG-13-016)
    NASA監察総監室(OIG)・自治体・公的機関の資料・英語・公表日 2013年6月13日・確認日 2026年10月12日
  7. [7]SpaceX Launches NASA Demonstration Mission to Space Station
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2012年5月22日・確認日 2026年10月12日
  8. [8]NASA Administrator Calls Station Following SpaceX Historic Feat
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2012年5月25日・確認日 2026年10月12日
  9. [9]First Contracted SpaceX Resupply Mission Launches with NASA Cargo to Space Station
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2012年10月7日・確認日 2026年10月12日
  10. [10]SpaceX Dragon Returns from Space Station with NASA Cargo
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2012年10月28日・確認日 2026年10月12日
  11. [11]NASA Chooses American Companies to Transport U.S. Astronauts to International Space Station
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2014年9月16日・確認日 2026年10月12日
  12. [12]NASA Administrator Statement on the Loss of SpaceX CRS-7
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2015年6月28日・確認日 2026年10月12日
  13. [13]NASA Awards International Space Station Cargo Transport Contracts
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2016年1月14日・確認日 2026年10月12日
  14. [14]NASA Astronauts Launch from America in Historic Test Flight of SpaceX Crew Dragon
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2020年5月30日・確認日 2026年10月12日
  15. [15]NASA extends ISS cargo contracts through 2030
    SpaceNews・取材記事・英語・公表日 2024年11月9日・確認日 2026年10月12日・本文は会員登録制。NASAの調達文書(2024年11月8日付)に基づく報道
  16. [16]NASA Sets Coverage for SpaceX 35th Station Resupply Launch, Arrival
    NASA・プレスリリース・英語・公表日 2026年10月7日・確認日 2026年10月12日
  17. [17]Form S-1 Registration Statement (Space Exploration Technologies Corp.)
    SpaceX(米証券取引委員会EDGARで確認)・公式サイト・英語・公表日 2026年5月20日・確認日 2026年10月12日・上場申請書類。財務数値は2025年12月期、事業の数値は2026年3月末時点
  18. [18]SpaceX makes its Nasdaq debut after the largest public offering in history
    Euronews・取材記事・英語・公表日 2026年6月12日・確認日 2026年10月12日
  19. [19]Commercial Resupply Services Overview
    NASA・公式サイト・英語・公表日 2015年6月18日・確認日 2026年10月12日・最終更新2023年9月26日
  20. [20]NASA calls upon commercial firms to serve space station
    Spaceflight Now・取材記事・英語・公表日 2008年12月23日・確認日 2026年10月12日・CBS Newsのウィリアム・ハーウッド記者の記事を転載。NASA発表の内容と当事者の発言を記載

公表日は出典の掲載日、確認日は編集部が内容を確認した日です。出来事の日付は本文に記載しています。日本語以外の出典は、編集部が内容を日本語にして要約しています。引用文の訳も編集部によるものです。

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