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共創事例
特養を実証の場に開き、介護ロボットで夜勤を一人減らす働き方モデルを作って国の基準を動かす
北九州市(保健福祉局 先進的介護システム推進室、現・介護イノベーション推進室)(自治体・公的機関) × 社会福祉法人春秋会(好日苑大里の郷)(中小企業) × 介護ロボット・ICT機器メーカー群(北九州市介護ロボット開発コンソーシアム)(大手企業)
日本福岡県北九州市スケール枠組み 国家戦略特区(福岡市・北九州市)、厚生労働省「介護施設等における生産性向上に資するパイロット事業」(2019年度)情報確認日 2026年10月13日
政令指定都市で最も高齢化が進む北九州市が、2016年度から国家戦略特区の特例を使って介護施設での介護ロボット・ICTの実証を重ねてきた取り組みです[13][26]。2019年度には厚労省のパイロット事業として社会福祉法人春秋会の地域密着型特養「好日苑大里の郷」で運営実証を行い、介護保険の基準に近い2.87対1の人員配置で業務時間を約35%減らし、夜間の定期巡回を廃止して夜勤を3人から2人にする「北九州モデル」を2020年度に確立しています[12][13][32]。市はこの結果を国に提案し、2021年度介護報酬改定で見守り機器を全居室に置いた特養の夜勤加算要件が緩和されたとしています[1][24]。2021年4月に導入支援拠点を開き、2026年度も市内5施設への伴走支援が続いています[1][15]。
1共創の構造図解:共創プロジェクトの形
Before起点
A北九州市
① ニーズ・シーズ介護人材不足に備え、質を保ちながら生産性を上げる働き方を作り、介護ロボット産業も育てたい
② 提供リソース特区の特例と条例改正、作業観察の手法、助言・倫理審査の体制、コンソーシアム、事業費、国への提案
B春秋会
① ニーズ・シーズ深刻化する人手不足を見据え、質を落とさずに現場が回る新しい働き方を作りたい
② 提供リソース定員29人の特養の現場、職員の参加、業務データ、運営の変更
C機器メーカー群
① ニーズ・シーズ介護現場の実証フィールドとデータを得て、機器を改良し製品化したい
② 提供リソース見守り機器・インカム・記録システム・移乗支援機器などの実機と導入研修
During共創
③ 共同活動特区の特例で特養を実証の場にし、作業観察から機器選定・運営変更まで積み上げて2020年度に北九州モデルを確立。国の基準改定と市内横展開へ
④ 成果物北九州モデルとガイドライン、導入支援センター、人材育成講習、夜勤加算の0.6人要件、共同生活室特例の全国措置
After成果
A北九州市の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果北九州モデルの確立、報酬改定への要望反映(市の説明)、導入支援15施設・相談683件、特例の全国措置今後の目標・期待在宅版モデルの確立(2026年度)、モデル施設の開設(2027年3月)、海外展開
B春秋会の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果2.87対1の配置で業務時間35%減、夜勤3人→2人、定期巡回廃止。法人内の他施設にも展開今後の目標・期待法人内の施設でケアと働きやすさの両立を続ける
C機器メーカー群の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果改良8件・開発9件(2021年3月末累計)、現場の要望に応じた機器改良今後の目標・期待北九州発の介護ロボットの製品化(市の目標)。各社の販売実績は未確認
プロジェクト全体の段階
探索PoC共同開発事業化スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:スケール 2019年度の運営実証を経て2020年度に「北九州モデル」を確立し
[1][13]、市は「当初の事業目標を達成」と総括しています
[1]。2021年4月に導入支援拠点を開設し、2021〜2023年度に各5施設、2025年度に5施設へ導入支援を行い(2024年度は5施設の計画)
[9][11][16]、2026年度も5施設を選定しています
[15]。特区の特例は2024年3月の厚労省Q&Aで全国措置になっています
[27][28]。実証施設1か所から市内の施設群と国の制度へ広がった段階と判断しています。一方、市は無料の伴走支援を「令和8年度末まで」としており
[15][22]、2027年度以降の形は未公表です(2026年10月時点)。
2背景と各組織の狙い
北九州市は、市の資料で「政令指定都市で最も高齢化が進んでおり、介護人材不足への対応が喫緊の課題」とされてきました[5]。一方で、ものづくり都市としての企業集積と、産業医科大学や九州工業大学などの学術機関を持ち、介護ロボット産業の振興も視野にありました[3]。市は2016年度から地方創生の事業として実証を始めています[29]。
実証の場となった社会福祉法人春秋会の好日苑大里の郷は、定員29人の地域密着型特養です[23]。施設長は、人手不足がさらに深刻化することが分かっていながら現状のままの介護を続けることは解決につながらない、と考えていました[12]。
機器メーカーの側には、現場で機器を試し、ニーズを反映して改良する場が必要でした。市はFAISを事務局とする開発コンソーシアムで、実証データ・フィールドの提供や開発助成、倫理審査のサポートを行っています[1]。
3提供資源と役割
A北九州市(保健福祉局 先進的介護システム推進室、現・介護イノベーション推進室) 自治体・公的機関・福岡県北九州市小倉北区 ・ 公式サイト
福岡県の政令指定都市。市の資料は「政令指定都市で最も高齢化が進んでおり」と記しています[5]。2017年度に保健福祉局内に先進的介護システム推進室を設置し[13]、現在は介護イノベーション推進室が「北九州モデル」の普及、在宅版の構築、介護テクノロジーに関する業務を担っています[30]。
- 役割
- 特区の特例と実証費用、調整、国への提案
- ① ニーズ・シーズ
- 介護人材不足への対応が課題で、2016年度から「介護職員の負担軽減、入居者の自立支援、職員の専門性や働きがいの向上」を目指す先進的介護を地方創生の事業に位置づけています[29]。同時に、ものづくり都市としての企業集積と学術機関を生かした「介護ロボット産業の振興」も狙いとしています[3]。
- ② 提供リソース
- 国家戦略特区の区域計画(2016年4月認定)で、ロボット実証時に隣接2ユニットの共同生活室を一体利用できる特例を得て条例を改正[13][26]。介護作業を約270項目に分けて30秒ごとに観察する独自アプリと、産業医科大学などの助言機関・倫理審査委員会[23]。FAISに事務局を置く介護ロボット開発コンソーシアム(55会員)[1]、介護ロボットマスター育成講習[1]、2021年度以降は年6,400万円の事業費(計画)[3]。国への要望・提案[1]。
- ③ 共同活動での担当
- 実証施設の公募・選定、作業観察による課題分析、機器の選定、効果測定の設計を担い、結果を国に提案した[1][13][23][31]。2021年度以降は導入支援拠点と事務局(麻生教育サービス)を通じて市内施設へ横展開している[5][15]。
- ⑤ 確認できた成果
- 2019年度の実証を経て2020年度に「北九州モデル」を確立し、「当初の事業目標を達成」と総括[1][13]
- 2020年6月の厚労省への要望が2021年度介護報酬改定に反映されたと市は説明(夜勤職員配置加算の0.9人要件を0.6人に緩和)[1]
- 2021年4月26日に導入支援拠点を開設。2021〜2023年度に15施設へ導入支援し、相談は累計683件[9]
- 2023年度の特区実証を経て、2024年3月の厚労省Q&Aで共同生活室の可動壁の一時開放が全国で認められた[13][27][28]
- 市の調査で、特養(地域密着型を含む)の介護テクノロジー普及率は2025年度に82.1%[18]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 在宅版「北九州モデル」を2025年度に実証、2026年度に確立、2027年度から普及する計画[9]
- 「未来型介護モデル施設」(特定施設)を2027年3月に事業開始予定[21]
- 国内外からの研修生受け入れや「先端テクノロジーと介護手法のパッケージ化」による海外展開[9]
B社会福祉法人春秋会(好日苑大里の郷) 中小企業・福岡県北九州市門司区・小倉南区
北九州市の社会福祉法人。実証施設の「好日苑大里の郷」は2012年4月開設の地域密着型特養(ユニット型、定員29人)で、短期入所・グループホーム・小規模多機能を併設します[23]。2016年度に市が公募で選んだ実証施設2か所のうちの1つです[31]。同法人の特養「好日苑」(小倉南区、1998年9月開設、入所70人・短期入所16人)[17]、グループホーム「好日苑徳力の郷」[15]も運営しています。法人全体の職員数・事業収益は未確認です。非営利の社会福祉法人であるため、本サイトでは中小企業に分類しています。
- 役割
- 実証の場と業務データの提供、運営の変更
- ① ニーズ・シーズ
- 施設長は「人手不足はさらに深刻化することが分かっている。将来を見据えた新しい介護現場のあり方を模索することが大切」と述べ、現状のままの介護を続けることは解決につながらないという認識から北九州モデルの導入を決めたと語っています[12]。同法人の特養「好日苑」も慢性的な人材不足による職員の負担増と疲弊を課題としていました[17]。
- ② 提供リソース
- 3ユニット・定員29人の地域密着型特養という実証の場[23]。2018年度は介護職員11人が移乗支援機器の実証に参加し、浴室リフトなど既存機器の満足度調査にも21人が答えています[23]。2019年度の運営実証では、業務の仕分け、夜勤を3人から2人へ変える人員配置、定期巡回の廃止といった運営そのものを変えています[12][32]。
- ③ 共同活動での担当
- 実証施設として職員の作業観察・業務データを提供し、機器を使った移乗介助や夜間の見守り、記録の電子化を実務の中で試した[12][23][31]。施設長は組織方針の共有と現場の意識改革を先導し、現場に権限を委譲した[12]。
- ⑤ 確認できた成果
- 2019年度の実証で人員配置2.87対1での運用、全体の業務時間約35%減、夜間の不要な巡回62%減、夜間の定期巡回の廃止を実現[12][31][32]
- 夜勤を3人から2人へ変更し、1人あたりの夜勤回数は月2回減少。全職員が月10日の休暇(有給休暇1日を含む)を取れるシフトを前提にした[12][31][32]
- 施設長は「生産性が向上しただけではなく、組織が変わったことを実感している」と述べた[12]
- 同法人の特養「好日苑」が2025年度の導入支援を受け、夜間コール回数(2日間平均)が78回から13.5回に減少[16][17]
- グループホーム「好日苑徳力の郷」が2026年度の導入支援施設に選定[15]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 「まずやってみる意識」「やれば変わるという実感」を大切に、ケアと働きやすさの両立を目指す(好日苑)[17]
C介護ロボット・ICT機器メーカー群(北九州市介護ロボット開発コンソーシアム) 大手企業・北九州市ほか
市の実証に機器を提供し、改良に応じた企業群。2018年度の移乗介助の実証ではマッスル株式会社(大阪市、ROBOHELPER SASUKE)と株式会社安川電機(北九州市、移乗アシスト装置)が協力メーカーでした[23]。2019年度の実証ではパナソニック株式会社が連携し[2]、市の2020年2月の資料は導入機器としてミオ・コーポレーション(生体センサー)、ノーリツプレシジョン(Neos+Care)、マッスル(SASUKE)、富士データシステム(ケアカルテ)、パナソニック(プラットフォーム)、ハンディケア(リフト)の製品とインカムを挙げています[31]。2022年度の実証でもパナソニックの見守り支援機器「ライフレンズ」が使われています[7]。開発コンソーシアムは2016年度にFAISを事務局として発足し、55会員(2021年3月末)[1]。2021年度に「介護ロボット等普及開発ネットワーク」へ移行し、48団体(うち市内14団体、2023年12月末)です[2][9]。会員の規模は大手から中小まで幅があり、本サイトでは主要な機器提供企業の規模で大手企業に分類しています。
- 役割
- 機器の提供、導入研修、現場の要望に応じた改良
- ① ニーズ・シーズ
- 介護現場のニーズを機器に反映させ、実証データと実証フィールドを得て製品を改良・開発したい。コンソーシアムは実証データ・実証フィールドの提供、開発助成、倫理審査・安全検証のサポートを会員への支援策としています[1]。
- ② 提供リソース
- 見守り支援機器(体動検知型と生体情報取得型)、インカム、記録システム、機器間の連携システム、移乗支援機器、浴室リフトといった実証施設の「フルパッケージ」[12]。2018年度はSASUKEと移乗アシスト装置を提供し、メーカーによる導入研修を実施[23]。2022年度は見守り支援機器ライフレンズ、多機能歩行訓練リフト、歩行トレーニングロボット[7]。
- ③ 共同活動での担当
- 機器を提供して導入研修を行い、現場の要望に応じて改良した。2018年度はクッション性の高い床で動きにくいという要望を受け、SASUKEのキャスターを大型に変更している[23]。
- ⑤ 確認できた成果
- コンソーシアムを通じた改良8件、開発9件(うち助成14件、2021年3月末累計)[1]
- 現場の要望に応じた改良(SASUKEのキャスター変更)[23]
- 2021年度以降も市内企業・大学の開発を市が補助(ひびきの電子、有薗製作所、リーフなど)[5]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 「北九州発のロボットの製品化実現」(市の目標、2021〜2023年度)[5]
4共同活動③
2016年4月、福岡市・北九州市の国家戦略特区の区域計画に、市内のユニット型特養でロボットの実証を行う際に隣接2ユニットの共同生活室を一体利用できる特例が認定されました[26]。市は条例を改正し、公募で選んだ特養2施設で、介護職員の作業を約270項目に分けて30秒ごとに観察する「見える化」から始めています[13][23]。2017年度は3施設を追加し、7分野11機種の機器を実証して効果を確認しました[13][23]。
2018年度は厚労省のモデル事業として、好日苑大里の郷など特養3施設でマッスルと安川電機の移乗支援機器を実証し、メーカーが導入研修と現場の要望に応じた改良を行いました[23]。
2019年度、市は業務の仕分け、ロボット・ICTの活用、元気高齢者の活用を柱とする「北九州モデル」の仮説を立て、厚労省のパイロット事業として好日苑大里の郷で運営実証を行いました[12][13]。全居室の見守り機器、インカム、記録システム、移乗支援機器と、周辺業務を担う介護助手を組み合わせ[12][31]、基準の3対1に近い2.87対1の配置で全体の業務時間を約35%、夜間の不要な巡回を62%減らし、定時巡回を止めてスマホやモニターで入居者の状態を確認する運用に変えています[12][31][32]。アクシデントの発生率は変わらず、夜勤は3人から2人になりました[12][31][32]。
市は2020年2月に規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループで実証結果を報告し、ユニットの人員配置基準の緩和や報酬改定を要望しています[31]。2020年度にモデルを確立して厚労省に要望し、2021年度介護報酬改定で見守り機器を全居室に置く特養の夜勤職員配置加算の人員要件が0.9人から0.6人に緩和されました[1][13][24]。2021年4月に導入支援拠点を開設し、2022年3月にガイドラインを作り、以後は毎年5施設前後へ約10か月の伴走支援を続けています[5][9][15]。2023年度には別の特養で可動壁による共同生活室の一体利用を実証し、2024年3月の厚労省Q&Aで全国措置になりました[13][27][28]。
5成果物と成果④⑤
成果物
- 「北九州モデル」(ICT・介護ロボットの活用を含む業務マネジメントと弾力的な人員配置を組み合わせた業務改善の方法。2020年度確立)[1][12]
- 「北九州モデル導入・実践ガイドライン」(2022年3月、市内の入所系施設に配布)と紹介動画[9][12][14]
- 「介護ロボット導入マニュアル」と「介護ロボットを活用した介護方法の手順書」(2018年度、厚労省事業)[23]
- 北九州市介護ロボット等導入支援・普及促進センター(2021年4月26日開設、北九州モデル再現エリアと機器展示エリア)[1]
- 介護ロボットマスター育成講習(2017年度〜、総受講者のべ1,083人・2023年度まで)[9]
- 2021年度介護報酬改定における夜勤職員配置加算の0.6人要件(見守り機器100%、インカム、安全体制の確保が条件)[24][25]
- 共同生活室の可動壁の一時開放を認める厚労省Q&A(2024年3月、特区の特例の全国措置)[27][28]
2.87対1、約35%、62%は2019年度の実証結果で、比較対象は実証前の同じ施設(特養29床+ショートステイ10床)です[12][31][32]。市の2020年2月の資料は業務時間の効率化を30%としており[31]、2022年3月のガイドラインと2021年12月の資料では約35%です[12][32]。記録時間の49%短縮や会話時間2.5倍も同じ実証の値です[12]。導入支援先の「夜勤帯の業務時間約38%減」は2021年度の支援施設での成果例で、施設名は公表されていません[5]。普及率は市のアンケートの回答施設をもとにした集計で、2025年度の回収率は58.4%です[18]。
未確認・留意点- 2019年度の実証の導入機器とメーカーは市の2020年2月の資料[31]、パナソニックとの連携は2021年度の市資料[2]、機器の概算費用はガイドライン[12]で確認しました。各社の提供条件や改良の内容は未確認です。2018年度の協力メーカー(マッスル、安川電機)は厚労省掲載の報告書で確認しました[23]
- 2021年度介護報酬改定について、市は「本市の要望事項が反映された」としていますが[1]、厚労省の改定資料は「令和2年度に実施した介護ロボットの導入効果に関する実証結果を踏まえ」と記し、北九州市の実証には触れていません[24]
- 市の2019年度の事業報告「介護ロボット等を活用した『先進的介護』の実証事業について〜令和元年度事業報告〜」(2020年4月公表)は、2026年10月14日の確認時に市サイトから削除されており(404)、関連ページにもリンクが残っていません。同報告だけに基づいていた実証期間の日付、夜勤帯の業務時間の削減率、ヒヤリハットの件数、2020年2月の全世代型社会保障検討会議での紹介に関する記述は、他の資料で確認できなかったため本文から外しています
- 2019年度の実証施設について、市の現行資料は「4ユニット39床(うち10床はショートステイ)」「特養29床+ショートステイ10床」と記し、施設名を挙げていません[12][32]。本サイトでは、同じガイドラインで好日苑大里の郷(定員39名、地域密着型ユニット型)の施設長が北九州モデルの導入を決めたと語っていること[12]と、同施設が2016年度に選ばれた実証施設であること[31]から、好日苑大里の郷と判断しています
- 春秋会の法人全体の職員数・事業収益、好日苑大里の郷が加算の0.6人要件を実際に算定しているかは未確認です
- 2016〜2020年度の実証費用は未確認です。2021年度以降の事業費「64,000千円/年度」は地方創生推進交付金を申請中の計画値です[3]
- 2022年度の資料は導入支援を「令和6年度以降は、全国展開に向けて、民間企業に移行する予定」としていましたが[7]、2025・2026年度も市が募集し事務局は麻生教育サービスです[15][16]。移行の経緯は未確認です
- 導入支援センターの独自サイトは2026年10月時点で内容が表示されず、センターが置かれた市立介護実習・普及センターは2025年11月に「テクノケア北九州」へ改称しています[19]。同センターの指定管理者は2025〜2029年度も麻生教育サービスです[20]。導入支援センターの名称・機能の現在の扱いは未確認です
- 評価委員会の資料は2023年度分まで公開されており、2024年度以降の開催は確認できていません[30]
6組み合わせの意味編集部の考察
考察この組み合わせの要点は、自治体が「規制の特例」「実証の費用と手法」「国への提案」を、社会福祉法人が「現場と運営を変える決断」を、メーカーが「機器と改良」を持ち寄り、機器の試用ではなく運営モデルとして形にしたことにあると考えられます。市は作業観察で業務を数値化してから機器を選び[23]、施設は夜勤の人数や巡回の方法といった運営そのものを変えました[12][32]。機器の効果は、運営を変えて初めて人員配置の数字に表れたとみられます。
もう一つの要点は、成果を国の人員基準に結び付けた点です。評価委員会では「機械を入れて人が減ると報酬も減る」「経費の問題で厳しい」といった意見や、インカムの投資効果は見えにくく経営的な決断をしにくいとの意見が出ており[4][6]、機器の導入だけでは経営に見合わない構造がありました。市は2020年6月に要望を行い、2021年度改定で見守り機器を全居室に置き、インカムと安全体制を整えた特養の夜勤加算要件が0.6人に緩和されています[1][24]。要件の中身は実証施設の構成と重なります[12]。2023年度の可動壁の実証が2024年3月に全国措置になった経緯も同様です[13][28]。
同時に、横展開には時間と伴走が要ることもうかがえます。市は毎年5施設前後に約10か月の支援を続け、1施設あたり年十数回のやりとりを重ねているとしています[10][15]。2025年度の調査でも導入をためらう理由に価格や使い方の分かりにくさが挙がっており[18]、モデルの確立と普及は別の仕事になっているとみられます。
7他社への応用編集部の考察
考察この型は、自治体が規制の特例や実証費用を用意し、地域の事業者(介護や保育など)が現場を開き、機器の企業が製品を持ち込む共創に応用できると考えられます。鍵は、機器の効果を人員配置や業務時間といった運営の指標で測ることと、結果を制度や報酬の要件に結び付ける出口を最初から持つことだと推察できます。本事例では、作業観察による数値化[23]、基準に対応する人員配置の目標[12][31]、国への要望[1][31]がこの順で用意されていました。
成立の条件としては、第一に、現場を開く事業者のトップが、機器の導入ではなく運営の変更として取り組むことが挙げられます。施設長は「色々現場での反発があるときに、トップがぶれないことが重要」と述べています[12]。第二に、自治体が実証後の普及体制(拠点、ガイドライン、人材育成、事務局)を用意することです。市は実証の翌年度に拠点を開き、6年続けています[1][15]。第三に、メーカーが現場の要望に応じて改良することです[23]。
留意点として、市は無料の伴走支援を2026年度末までとしており[15]、その後の担い手は未公表です。評価委員会では、グループホームなど小規模な事業所には施設並みの機器導入が難しい[10]、導入は各施設の財務構造に左右される[8]との指摘もありました。また、報酬要件の緩和は国の実証も根拠にしており[24]、自治体の実証がどこまで制度を動かしたかは一対一では測れません。制度への反映を狙う場合は、国側の検討の流れに合わせて提案の時期を見極めることが望ましいでしょう。
成立に必要な条件
- 現場を開く事業者のトップが、機器の導入ではなく運営の変更として取り組み、現場の反発にぶれないこと[12]
- 機器の効果を業務時間や人員配置など運営の指標で測る設計(作業観察など)を最初に持つこと[23][31]
- 自治体が規制の特例(特区など)や倫理審査・助言の体制を整え、実証を安全に進められること[13][23]
- 実証の成果を制度や報酬の要件に結び付ける出口(国への要望・提案)を用意すること[1][24]
- 実証後に拠点・ガイドライン・人材育成・事務局による横展開の体制を、複数年にわたって続けること[1][9][15]
- メーカーが現場の要望に応じて機器を改良し、導入研修を担うこと[23]