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共創事例
大学が見つけた希少糖を、でん粉メーカーの量産技術と県の後押しで世界市場の素材に育てる
国立大学法人香川大学(大学・研究機関) × 松谷化学工業株式会社(中堅企業) × 香川県(自治体・公的機関)
日本香川県(高松市・三木町・宇多津町)スケール枠組み 文部科学省 知的クラスター創成事業(2002〜2006年度)、都市エリア産学官連携促進事業(2008〜2010年度)、香川県「かがわ希少糖ホワイトバレー」プロジェクト情報確認日 2026年10月13日
香川大学農学部の何森健氏が1991年に土壌の微生物から見つけた酵素で、果糖を希少糖D-プシコース(アルロース)に変える技術が生まれ、2000年にキログラム単位の生産法が確立しています[1][4]。兵庫県の松谷化学工業が2004年に県の知的クラスター事業に参画し、特保申請のノウハウと量産技術で製品化を主導、2012年に約30億円を投じて香川県宇多津町に工場を建て、県は助成・寄附講座・誘致で支えています[1][3]。2013年の希少糖含有シロップから、米国Ingredionとのメキシコ工場(2019年)、純品アルロース「ASTRAEA」の国内販売(2021年)へ進み、2026年3月時点で国内157社・440品目に採用されています[11][26][28]。
1共創の構造図解:共創プロジェクトの形
Before起点
A香川大学
① ニーズ・シーズ酵素で作れるようになった希少糖の用途を開発し、地域の産業にしたい
② 提供リソース希少糖の生産技術と酵素、機能性の研究、生産ステーション、全希少糖を作れる研究施設
B松谷化学工業
① ニーズ・シーズ難消化性デキストリンに続く機能性素材を量産・事業化し、市場をつくりたい
② 提供リソース特保申請の経験と知財戦略、約30億円の県内工場、海外の許認可とライセンス、大手メーカーへの提案営業
C香川県
① ニーズ・シーズ香川大学発の希少糖を、研究拠点・産業・ブランドとして地域に根づかせたい
② 提供リソース研究助成と寄附講座、工場誘致、商品開発支援と分析、ブランド化の事業
During共創
③ 共同活動知的クラスター事業で大学と県が体制を作り、2004年参画の松谷化学工業が特保申請とシロップ製品化、約30億円の県内工場、海外展開を主導
④ 成果物希少糖含有シロップ、約30億円の県内工場、FDAのGRAS通知、純品アルロースASTRAEAとメキシコ工場、機能性表示食品
After成果
A香川大学の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果3つの大臣賞、内閣府事業の採択、連携企業25社、Natureでの研究紹介(2026年)今後の目標・期待医療・農業・工業への用途展開と、希少糖を核にした産業集積
B松谷化学工業の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果シロップは累計751社・3,522品目、アルロースは157社・440品目、2025年度販売は前年比160%今後の目標・期待酵素によるコスト低減、アジアでの委託生産、液状品の供給、糖類表示からの除外
C香川県の成果
⑤ 獲得成果確認できた成果約30億円の工場と製造子会社の県内立地、県内6社の機能性表示食品、希少糖生産企業4社今後の目標・期待「希少糖といえば香川」の発信と、地域ブランドの確立
プロジェクト全体の段階
探索PoC共同開発事業化スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:スケール 2013年7月に宇多津町の工場が稼働して希少糖含有シロップの全国販売が始まり、2014年5月時点で104社・約700商品に採用されています
[3][20]。純品アルロースは2019年にメキシコ工場が竣工し、2021年10月から国内全国販売、2024年7月時点で販売可能な国・地域は14、国内採用は約100社・150商品でした
[7][11][12]。2026年7月の業界紙インタビューでは、2025年度の販売が前年比160%、2026年3月時点で157社・440品目に採用、機能性表示食品は37品目公表と述べられています
[26]。香川県の共創推進会議は2024年7月の第2回が最新の公開資料で
[7]、2025年11月に第9回国際希少糖学会が高松で開かれ
[33]、2026年4月には香川大学の機構設立10周年シンポジウムに知事が祝辞を寄せています
[24][25]。松谷化学工業は2026年9〜10月も学会展示や試飲会でアルロースを紹介し
[37]、県内では2026年11月の「かがわ希少糖・菓子まつり」が予定されています
[35]。研究開発から製品の量産と海外展開に移って十数年続いており、スケールの段階と判断しています(2026年10月時点)。
2背景と各組織の狙い
希少糖は「自然界に存在量の少ない単糖とその誘導体」で、50種以上あります。香川大学農学部の何森健氏は1984年から研究を始め、1991年に農学部の土壌から果糖をD-プシコース(アルロース)に変える酵素を持つ微生物を発見しました。2000年にキログラム単位の生産法が確立し、2002年には全希少糖の生産経路図「Izumoring」が公表されています[1][4]。D-プシコースは砂糖の約7割の甘さでカロリーがほとんどなく、食後血糖値の上昇抑制などの機能が報告されました[1][11]。
香川県は県内総生産が全国36位(2010年度)で、研究者数や特許出願数も多くない地域です[1]。県は1998年から大学の希少糖研究を助成し、2002年の知的クラスター創成事業の採択を機に産学官の体制を作りました[1]。文部科学省の研究所は、県内食品企業の販売力の不足と関連産業の集積が課題だったと整理しています[2]。
松谷化学工業は、難消化性デキストリンで特保素材の供給をほぼ一手に担うでん粉加工メーカーです[1][30]。次の機能性素材を探す中で希少糖に注目し、2004年に知的クラスター事業に加わりました[1]。県内企業が実用化に消極的になると県の関与は一時弱まり、第1期終了後の研究開発は香川大学と松谷化学工業が中心になったと、NISTEPの報告書は記しています[1]。
3提供資源と役割
A国立大学法人香川大学 大学・研究機関・香川県高松市(本部)・木田郡三木町(農学部) ・ 公式サイト
1949年創設の国立大学。農学部の何森健氏が1991年に土壌微生物から果糖をD-プシコース(アルロース)に変える酵素を発見し、2000年にキログラム単位の生産法を確立[1][4]。2016年に全学組織「国際希少糖研究教育機構」を設置し、約80名の教授陣が約60の研究課題に取り組む[8][15]。
- 役割
- 希少糖の発見、生産技術と機能性の研究
- ① ニーズ・シーズ
- シーズは、自然界に微量しかない単糖「希少糖」を酵素反応で作る技術です。酵素を見つけた当時、D-プシコースは1gあたり約4万円で、2000年にキログラム単位の生産法ができて注目を集めました[1]。2002年には全希少糖の生産経路図「Izumoring」を公表しています[1][4]。ニーズは、50種を超える希少糖の用途を開発し、研究の成果を地域の産業にすることでした。何森氏と企業の連携は当初、岡山県の林原生物化学研究所が相手で、県内企業との共同研究は2002年の知的クラスター創成事業を機に広がっています[1]。
- ② 提供リソース
- 酵素とIzumoringによる希少糖の生産技術[1][4]。知的クラスター創成事業(2002〜2006年度)で農学部・医学部の研究者が生理機能を組織的に研究し、血糖上昇抑制や抗肥満などの機能性データを蓄積[1][13]。2006年の希少糖生産ステーションと、大学発ベンチャーの希少糖生産技術研究所[1][4]。2016年からは国際希少糖研究教育機構が約50種すべての希少糖を生産できる施設を持ち、企業に希少糖を無償提供して共同研究する仕組みを運用[8][14]。
- ③ 共同活動での担当
- 生産技術の研究と機能性の解明を担い、松谷化学工業と共同で量産と応用の研究を行った。機能性表示食品の根拠となる研究レビューにも研究成果が使われている[1][12][13]。
- ⑤ 確認できた成果
- 産学官連携功労者表彰 文部科学大臣賞(2014年、かがわ産業支援財団の都市エリア事業関係者が受賞)[3]、松谷化学工業と共同で日本応用糖質科学会技術開発賞(2021年)[13]、イノベーションネットアワード2023 文部科学大臣賞[14]
- 2023年に内閣府「地域中核大学イノベーション創出環境強化事業」に採択(2023年度の交付額1億円)[34][36]
- 機構の連携企業は2024年時点で25社(うち県内21社)[7]。2026年3月、松谷化学工業との研究がNatureのパートナーコンテンツとして配信[22][23]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 食品以外の医療・農業・工業分野への用途展開。D-アロースを用いた治療法はAMEDの橋渡し研究プログラムに採択[7][25]
- 希少糖を石油に例え、シリコンバレーのような産業集積を目指す(機構の説明)[8]
B松谷化学工業株式会社 中堅企業・兵庫県伊丹市(本社)・香川県綾歌郡宇多津町(番の州工場) ・ 公式サイト
1919年創業、1937年設立のでん粉加工・機能性食品素材メーカー(非上場)。難消化性デキストリンのトクホ素材で知られる[1][30]。2013年11月時点で資本金1億円、従業員400名、売上高約512億円[1]。2024年11月期の売上高657億円、従業員450名[17]。2014年時点で三菱商事が株式の約30%を保有[30]。2004年の参画時点の規模は未確認で、本ページでは中堅企業として分類しています。
- 役割
- 量産技術と製品化、販売、県内への工場投資
- ① ニーズ・シーズ
- 食品素材の探索の一環で、知的クラスター創成事業で進む希少糖に着目しました。県外企業のため当初は事業に参画できず、何森氏に熱心に働きかけ、健康食品開発の経験と知見が認められて2004年に参画しています[1]。2003年春に社長の指示で農学部を訪ねたことが始まりだったと、同社役員は回想しています[32]。ニーズは、難消化性デキストリンに続く機能性素材を得て、特保申請や大手食品メーカーへの提案に生かすことでした[1][30]。
- ② 提供リソース
- 特保申請の経験と、知財・販売戦略(同社の大隈一裕氏が中心)[1]。異性化糖の製法を応用した希少糖含有シロップの製造技術[32]。2012年に約30億円を投じて宇多津町に月産1,000トンの工場を建設し、製造子会社サヌキ松谷を設立[1]。米国FDAへのGRAS通知(2014年)[29]。三菱商事の出資も得た海外展開会社レアシュガーインターナショナル(2015年)[31]、Ingredionへの知財ライセンスとメキシコ工場(2019年)[27][28]。大手食品メーカーに試作を提案する営業体制[1]。レアスウィート、希少糖食品、希少糖生産技術研究所など県内の関連会社への出資[1]。
- ③ 共同活動での担当
- 特定保健用食品担当の事業化マネージャーとして参画し、製品化のエビデンス収集、特保申請(2010年)、シロップの商品化(2011〜2013年)、純品アルロース「ASTRAEA」の海外・国内展開を主導[1][11][19]。
- ⑤ 確認できた成果
- 希少糖含有シロップは2014年5月時点で104社・約700商品に採用され、2014年1〜3月の売上は約6億円[3]。2023年時点の累計は751社・3,522品目(終売品を含む)[5]
- アルロース「ASTRAEA」は2026年3月時点で157社・440品目に採用、機能性表示食品は2026年6月時点で37品目が公表。2025年度の販売は前年比160%(同社執行役員の発言)[26]
- 販売可能な国・地域は2024年7月時点で日本を含め14[7]、2026年には同社把握で17か国[26]
- 香川大学と共同で日本応用糖質科学会技術開発賞(2021年)[13]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 高力価酵素の導入による生産コストの低減、アジアでの委託生産(2027年度の稼働を目指す)、糖類表示からの除外[26]
- 飲料向けに液状アルロースを供給すること(約70%を液状で提供する計画は検討段階)[8]
C香川県 自治体・公的機関・香川県高松市 ・ 公式サイト
四国北東部の県。2010年度の県内総生産は3兆6,289億円(全国36位)で、研究者数や特許出願数は全国的に多くない[1]。商工労働部産業政策課が希少糖産業の振興を所管し、希少糖戦略会議(2023年から希少糖等共創推進会議)を運営[6][9]。
- 役割
- 研究助成と寄附講座、工場誘致、ブランド化
- ① ニーズ・シーズ
- 県内に大規模な企業や研究資源が少ない中で[1]、香川大学発の希少糖を地域の産業にすることが狙いでした。2013年の産業成長戦略では「かがわ希少糖ホワイトバレー」プロジェクトとして、10年後の目標に「知の拠点」の形成、産学官一体の「希少糖産業」の創出、「香川の希少糖」ブランドの確立を掲げています[1]。
- ② 提供リソース
- 1998年のリサーチ・オン・リサーチ事業、2003年からの糖質バイオクラスター形成事業、香川大学への寄附講座(毎年2,000万円・5年間を2回)[1]。2012年に松谷化学工業が製造拠点の設置を決めると知事らが誘致活動を行い、県内立地が決定[1][3]。2013年度の希少糖関連予算は約7,800万円[1]、2024年度の糖質バイオ分野の事業費は2,131万円[7]。産業技術センターによる商品開発支援、希少糖の定量分析、機能性表示食品の届出支援[7][8]。「希少糖の日」や見本市の希少糖ゾーンなどのブランド化事業[7]。
- ③ 共同活動での担当
- 知的クラスター事業では県内企業を取りまとめ、2012年以降は工場誘致と県内企業の商品開発・販売支援に注力。戦略会議・共創推進会議で産学官の協議の場を運営している[1][6]。
- ⑤ 確認できた成果
- 松谷化学工業の約30億円の工場と製造子会社が県内に立地[1]
- 産業技術センターの支援で県内6社の機能性表示食品が登録(うち4件が市販、2024年時点)[7]
- 県内で希少糖の生産に携わる企業は2021年時点で4社[16]
- ⑤ 今後の目標・期待
- 「希少糖といえば香川、香川といえば希少糖」を世界に発信する(県商工労働部長の発言)[8]
- 地域団体商標などによる「香川の希少糖」ブランドの確立[8]
4共同活動③
2002年、文部科学省の知的クラスター創成事業(第1期、2006年度まで)に高松地域が採択され、香川県が中核機関を通じて産学官の体制を作りました。研究の柱は基礎研究基盤、大量生産技術、医薬品・食品・農薬の開発で、参画機関は12から32に広がっています[1]。
松谷化学工業は県外企業のため当初は参画できず、2004年に特定保健用食品担当の事業化マネージャーとして社員を送り込みました。以後は都市エリア事業(2008〜2010年度)などで香川大学と共同研究を進め、自社でも製品化のためのエビデンスを集めています[1]。純品のD-プシコースはコストと安全性の確認に時間がかかるため、2010年に希少糖を約15%含む「希少糖含有シロップ」を希少糖生産技術研究所と共同で開発し、認知度を上げる「中二階」の商品と位置づけました[1][19]。同年、4社出資の合同会社希少糖食品が純品で特保を申請し、販売と特許の一元管理を担うレアスウィートも設立されています[1]。
シロップは2011年6月に県内の法人向けに先行販売され、2012年6月に全国販売、2013年8月に家庭用500gボトルの全国販売が始まりました[19][20]。松谷化学工業は2012年に約30億円を投じて宇多津町に月産1,000トンの工場を建てることを決め、県が用地選定などで誘致し、2013年7月に稼働しています[1][32]。同年秋にテレビで紹介されて売上が急増し、2014年5月時点で104社・約700商品に採用されました[3]。
2018年12月、松谷化学工業は米国の食品素材大手Ingredionと提携し、2019年11月にメキシコにアルロース専用工場が竣工しました。Ingredionが南北アメリカ、松谷化学工業がアジアを担当し、県内工場で作られた酵素がメキシコ工場で使われています[11][27][28]。2021年10月に純品アルロース「ASTRAEA」の国内販売が始まり、香川大学の研究を根拠とする機能性表示食品の届出が同年11月に受理されました[11][12]。県は2023年に戦略会議を「希少糖等共創推進会議」に改め、生産・展開・研究の状況を産学官で共有しています[5][6]。
5成果物と成果④⑤
成果物
- 希少糖含有シロップ「レアシュガースウィート」(2011年6月県内法人向け、2012年6月全国法人向け、2013年8月家庭用500gボトル全国販売)[19][20]
- 宇多津町番の州工業団地の製造工場(2013年7月稼働、総工費約30億円、月産1,000トン)と製造子会社サヌキ松谷[1][32]
- 米国FDAのGRAS通知(GRN 498、2014年6月回答)[29]
- 純品アルロース「ASTRAEA」(2019年11月メキシコ工場竣工、2021年10月国内全国販売)[11][12]
- 機能性表示食品「アストレア プロ」(2021年受理)、「ASTRAEA W」(2023年10月スティック、2024年11月500g)など[12][21]
- 産学官の協議の場としての香川県希少糖戦略会議(2013年〜)と希少糖等共創推進会議(2023年〜)[6][9]
松谷化学工業の希少糖事業の売上は公表されていません。NISTEPの報告書は2014年の希少糖関連売上を約11.2億円(売上高560億円×2%)と推計しています[1]。「2025年度前年比160%」は同社執行役員の発言で、金額か数量かは記事に書かれていません[26]。採用社数・品目数は日本希少糖学会の集計(2026年3月)とされています[26]。世界のアルロース市場の予測(2024年約400億円、2027年約560億円)は民間調査会社の値で、香川県の会議資料に引用されたものです[7]。
未確認・留意点- 松谷化学工業の2004年の参画時点の売上高・従業員数は確認できていません。2013年11月時点(資本金1億円、従業員400名、売上高約512億円)[1]をもとに中堅企業に分類しています。資本金1億円は中小企業基本法の定義では中小企業に当たります
- 希少糖含有シロップの「商品化」の年は出典で異なります(経産省事業での2009年[1]、開発成功は2010年[19]、販売開始は2011年[4][18])。本ページは発売日を軸に記載しています
- シロップの売上約6億円の期間は、功労者表彰資料では2014年1〜3月[3]、NISTEP報告書では「2014年11月〜3月の5か月間」[1]とされ、一致しません
- 2010年に申請した特定保健用食品は、2016年3月時点で消費者委員会の段階にあり[10]、食品安全委員会は2015年12月にLDLコレステロール上昇への注意を条件とする評価案を示しています。許可の有無は確認できていません。2021年以降は機能性表示食品として届け出られています[12]
- 製造子会社サヌキ松谷の現在の法人としての存続は未確認です。2026年2月の会社案内は「番の州事務所」とのみ記載し[18]、レアスウィートも宇多津町の番の州事務所で注文を受けています[38]
- 松谷化学工業の関連会社への出資比率は、NISTEP報告書の相関図でサヌキ松谷100%、希少糖食品は4社25%ずつと読めますが、他は判読できず記載していません[1]
- 松谷化学工業とIngredionの契約の独占性・期間・対価は非公開です[27]。メキシコ工場の生産能力と投資額も公表されていません[28]
- NISTEP報告書は、製造の中核が県外企業で原料は米国産コーンスターチであり、「地域イノベーションの創出には成功したが、地域企業の高度化に成功したとは言い難い」と評価しています[1]
- 香川県の共創推進会議は第2回(2024年7月)以降の公開資料を確認できていません(2026年10月時点)[7]
- Natureの記事はパートナーコンテンツ(香川大学・松谷化学工業が制作に関与)で、FDA承認を2012年としていますが、FDAの通知一覧では松谷化学工業の通知(GRN 498)は2014年6月、2012年の通知(GRN 400)は韓国CJ第一製糖の申請です[23][29]
6組み合わせの意味編集部の考察
考察この組み合わせの要点は、地方大学の長年の基礎研究に、県外企業の量産技術・特保申請の経験・大手メーカーへの販路が結び付いたことにあると考えられます。量産の着想は大学で生まれましたが、大量生産の工程は企業内で開発され、特保申請のエビデンスの大部分も企業が集めました[1]。知的クラスター事業は地域内の連携を目的とする制度でしたが、県外企業の参加を条件付きで認めたことが実用化を加速したと、NISTEPは整理しています[1]。
もう一つの要点は、県の役割の変化です。県は研究助成と寄附講座で大学を支え、2012年に松谷化学工業が製造拠点の設置を決めると誘致に動き、工場が県内製品を作るようになってからは商品開発から販売までの支援に力を入れています[1]。産業技術センターが希少糖の定量分析を全国に先駆けて受け付け、県内企業の機能性表示食品の届出を支えている点は[7]、県が補助金の出し手から、県内企業が素材を使うための基盤へ役割を広げた例とみられます。
一方、同じ報告書は、製造の中核が県外企業で原料が米国産コーンスターチであることから、「地域イノベーションの創出には成功したが、地域企業の高度化に成功したとは言い難い」と評価しています[1]。純品アルロースの量産拠点はメキシコにあり、県内工場は酵素を供給しています[11]。地域発の技術が世界市場の素材になることと、地域企業が付加価値の高い工程を担うことは、別の課題として残っていると推察できます。
7他社への応用編集部の考察
考察この型は、地方大学の素材・バイオ系の研究シーズを、素材メーカーが量産・製品化し、自治体が研究助成と企業誘致で支える共創に応用できると考えられます。成立の条件としては、第一に、地域の枠組みに県外企業を受け入れる柔軟さが挙げられます。本事例では県内企業が実用化に消極的になった後、県外企業が中核を担いました。NISTEPは、地域の領域性にこだわりすぎると鍵となる企業を排除しかねないと指摘しています[1]。
第二に、製品化の難易度に段階を付けることです。純品の特保許可を待つ間に、希少糖を約15%含むシロップを先に商品化して認知と市場をつくり、その後に純品へ進んでいます[1]。第三に、企業が地域に投資しやすい条件を自治体がつくることです。県は工場立地で用地選定を支え[32]、以後の商品開発・分析・届出の支援で県内企業の採用を増やしています[7]。第四に、産学官の協議の場を続けることです。戦略会議は2013年から続き、2023年に共創推進会議へ改組されて、企業の生産・販売状況が共有されています[5][6][9]。
留意点として、地域発の技術が世界市場の素材になることと、地域企業が利益の大きい工程を担うことは別だと言えます。自治体が地域経済への効果を重視するなら、工場誘致に加えて、地域企業が素材を使って付加価値を得る仕組み(分析支援、ブランド、機能性表示の支援など)を早い段階から設計することが望ましいでしょう。
成立に必要な条件
- 地域の枠組みに県外の企業を受け入れ、鍵となる量産技術・販路・申請経験を持つ企業が参画できること[1]
- 製品化の難易度に段階を付け、認知と市場をつくる商品を先に出してから本命の製品へ進むこと[1]
- 自治体が用地選定や助成で企業の地域投資を支え、立地後は地域企業の商品開発・分析・届出の支援に力を入れること[1][7][32]
- 産学官の協議の場を長期に続け、企業の生産・販売状況や課題を共有すること[5][6][9]
- 地域企業が付加価値を得る仕組み(分析支援、ブランド、機能性表示の支援など)を、工場誘致とは別に設計すること[1][7]