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共創事例
化学大手との合弁で植物由来プラスチックの量産を目指し、解消後に単独で工場を建てる
Avantium(Avantium N.V.)(スタートアップ) × BASF(BASF SE)(大手企業)
オランダ アムステルダム 共同開発 情報確認日 2026年10月13日
植物由来の糖から新しいプラスチックPEFの原料FDCAを作る技術を持つオランダのAvantiumと、ドイツの化学大手BASFは、2016年10月に合弁会社Synvinaを設立し、ベルギー・アントワープのBASF拠点に年産5万トンの「参照プラント」を建てる計画を進めています[3] [9] 。しかし2018年1月に精製工程の課題で計画が2〜3年遅れ[10] [15] 、商業プラントへの投資基準を評価する時期を巡って両社の解釈が食い違い、BASFは2019年1月15日付で離脱しています[11] [12] 。Avantiumは1,370万ユーロでBASFの持分を買い戻して技術と人員を引き取り[14] 、規模を10分の1に縮めた年産5,000トンの工場をオランダ・デルフザイルに単独で建設して、2026年9月に初のFDCAを生産しています[18] [19] [30] 。
目次
共創の構造 背景と各組織の狙い 提供資源と役割 共同活動 成果物と成果 組み合わせの意味 他社への応用 出典 関連事例
1 共創の構造図解:共創プロジェクトの形
化学大手との合弁で植物由来プラスチックの量産を目指し、解消後に単独で工場を建てる:共創の構造(Avantium、BASF) プロジェクト全体の段階 探索 PoC 共同開発 事業化 スケール Before| 起点 During| 共創 After| 成果 A Avantium 1 ニーズ・シーズ 糖からFDCAを作る技術を商業規模に引き 上げ、量産とライセンス展開につなげたい 2 提供リソース YXY技術と特許、ヘレーンのパイロットプラン ト、技術チーム50名、ブランド企業との開発網 A Avantiumの成果 5 獲得成果 確認できた成果 BASFから5,725万ユーロの出資。解 消で5,000万ユーロの一時費用。単独 の5千トン工場で2026年9月に初生産 今後の目標・期待 2026年末の商業販売開始、増 資と公的融資、ライセンス展開 B BASF 1 ニーズ・シーズ 再生可能原料由来の新素材FDCA・PEFで、 新しい中間体・ポリマー事業に参入したい 2 提供リソース 現金5,725万ユーロの出資、アントワープ の生産拠点、市場開発・大規模生産の知見 B BASFの成果 5 獲得成果 確認できた成果 投資判断に至らず2019年1月に離脱。持分は 1,370万ユーロでAvantiumへ。損益は未公表 今後の目標・期待 未確認(離脱後の関与は確認できない) 3 共同活動 2016年に49対51の合弁を設立し 年5万トン工場を計画。2018年の 計画遅延後、投資判断の時期を巡 り対立し2019年1月に解消 4 成果物 合弁Synvina(49対51)、EUの2, 500万ユーロ助成、工程課題の解決。 解消後の単独工場(年5千トン)
Before起点 A Avantium
① ニーズ・シーズ 糖からFDCAを作る技術を商業規模に引き上げ、量産とライセンス展開につなげたい
② 提供リソース YXY技術と特許、ヘレーンのパイロットプラント、技術チーム50名、ブランド企業との開発網
B BASF
① ニーズ・シーズ 再生可能原料由来の新素材FDCA・PEFで、新しい中間体・ポリマー事業に参入したい
② 提供リソース 現金5,725万ユーロの出資、アントワープの生産拠点、市場開発・大規模生産の知見
During共創 ③ 共同活動 2016年に49対51の合弁を設立し年5万トン工場を計画。2018年の計画遅延後、投資判断の時期を巡り対立し2019年1月に解消
④ 成果物 合弁Synvina(49対51)、EUの2,500万ユーロ助成、工程課題の解決。解消後の単独工場(年5千トン)
After成果 A Avantiumの成果
⑤ 獲得成果 確認できた成果 BASFから5,725万ユーロの出資。解消で5,000万ユーロの一時費用。単独の5千トン工場で2026年9月に初生産 今後の目標・期待 2026年末の商業販売開始、増資と公的融資、ライセンス展開
B BASFの成果
⑤ 獲得成果 確認できた成果 投資判断に至らず2019年1月に離脱。持分は1,370万ユーロでAvantiumへ。損益は未公表 今後の目標・期待 未確認(離脱後の関与は確認できない)
プロジェクト全体の段階
探索 PoC 共同開発 事業化 スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:共同開発 合弁Synvinaは2016年10月の設立から
[3] 、パイロットプラントでの工程改良と参照プラントの事業性評価までを行い、商業プラントの最終投資決定(FID)には至らないまま、BASFが2019年1月15日付で離脱しています
[10] [12] 。到達した段階は共同開発と判断しています。その後、Avantiumは単独で年産5,000トンのFDCAフラッグシップ工場をデルフザイルに建設し、2024年10月に完工
[23] 、2025年8月に最初のユニットを稼働させ
[25] 、配管の溶接不良による遅れを経て
[27] 、2026年9月28日に初のFDCAバッチを生産しています
[30] 。既存のオフテイク契約に基づく商業販売は2026年末に始まる見込みで、2026年10月時点で商業出荷の発表は確認できていません
[30] [31] 。
2 背景と各組織の狙いAvantiumは2000年設立の化学技術企業で、2006年に糖をアルコール中で脱水してFDCAの前駆体を作る方法を見いだしています。FDCAは経済的な製法が100年以上なく「眠れる巨人」と呼ばれた物質で、同社は2011年にヘレーンでパイロットプラントを稼働させ、コカ・コーラやダノンとPEFボトルの開発を進めていました[3] [21] 。ただし商業規模の工場には資金と大規模生産の能力が足りず、2016年時点では未上場で、PMVなどから2,000万ユーロを調達した段階でした[2] 。
BASFは世界最大級の化学メーカーで、2015年の売上高は700億ユーロ超です[3] 。年次報告書は合弁を再生可能原料の活用策の一つと位置づけています[6] 。PEFはPETより二酸化炭素や酸素の遮断性と強度が高く、食品・飲料包装での用途が見込まれていました[1] [3] 。両社の計画は、参照プラントで製法を実証し、その後は技術をライセンスして産業規模に広げるというものでした[1] [3] 。Avantiumは2017年3月に上場して1億300万ユーロを調達しています[7] 。
3 提供資源と役割
A Avantium(Avantium N.V.) スタートアップ・オランダ・アムステルダム(本社)、ヘレーン(パイロットプラント)、デルフザイル(フラッグシップ工場) ・ 公式サイト
2000年設立の再生可能化学技術企業。2006年に糖をアルコール中で脱水してFDCAの前駆体を作る方法を見いだし、2011年にヘレーンでFDCAのパイロットプラントを稼働させています[21] 。合弁開始時の2016年は未上場で、ベルギーの公的投資会社PMVなどから2,000万ユーロを調達[2] 。2017年3月にEuronextに上場して1億300万ユーロを調達し、当時の従業員は90名、合弁に移ったYXY技術チームは50名でした[7] 。2025年末の従業員は251人(常勤換算)、2025年の売上高1,460万ユーロ、純損失2,710万ユーロ[28] [29] 。本ページでは共創開始時の位置づけに合わせてスタートアップとして分類しています。
役割 技術・パイロットプラント・人員の提供、解消後の単独事業化
① ニーズ・シーズ 植物糖からFDCAを作る自社のYXY技術を商業規模に引き上げることが課題でした。2016年3月の発表でvan Aken CEOは「世界一の化学会社と組むことで、この技術の産業化に必要な能力にアクセスできる」(編集部訳)と述べ、年産5万トンの参照プラントの建設と、その後の技術ライセンスによる世界展開を狙いとしています[1] [3] 。
② 提供リソース YXY技術と関連特許・ノウハウ、2011年から稼働するヘレーンのパイロットプラント、技術チームの従業員を合弁に現物出資し、49%の持分を得ました[9] 。東洋紡、三井物産、コカ・コーラ、ダノン、ALPLAなどとのPEF開発パートナー網も合弁に引き継いでいます[3] 。
③ 共同活動での担当 技術・設備・人員を合弁に移し、合弁がパイロットでの工程改良と参照プラントの事業性評価を進めました[9] [10] 。解消後はBASFの持分を買い戻し、技術と人員を引き取って商業化戦略を作り直しています[14] [18] 。
⑤ 確認できた成果 合弁設立に伴い、BASFから合計5,725万ユーロの現金出資を受けた(Avantiumは現物出資で49%)[9] 2018年1月に発表した精製工程の技術課題は、合弁期間中に解決した(2019年1月時点)[15] [16] 解消時にBASFの持分に1,370万ユーロ、合弁が取得した資産に純額370万ユーロ、計1,740万ユーロを支払い、2018年決算に減損3,690万ユーロと不利契約引当1,310万ユーロの計5,000万ユーロの一時費用を計上。2018年の純損失は6,840万ユーロ[14] [16] [17] 単独で年産5,000トンのFDCAフラッグシップ工場をデルフザイルに建設し、2024年10月に完工、2026年9月28日に初のFDCAバッチを生産[23] [30] 2026年9月時点でオフテイク契約23件、将来のライセンス工場向けの能力予約17件(年15万トン超)[31] 工場の稼働遅れに伴い、2024年12月の融資枠拡大と1,120万ユーロの増資、2025年9月の8,480万ユーロの増資(オランダ政府が参加)など資金調達を重ねた[24] [26] [28]
⑤ 今後の目標・期待 2026年末に既存のオフテイク契約に基づく商業販売を開始し、12〜24か月で設計能力に到達[30] 5,500万ユーロ以上の増資と2,000万ユーロの公的融資(Nij Begun)を2026年第4四半期に実施。2026年9月30日の臨時株主総会で授権資本の拡大を承認[31] [32] 技術ライセンスによる海外でのFDCA・PEF工場の展開[20] [31]
B BASF(BASF SE) 大手企業・ドイツ・ルートヴィヒスハーフェン(本社)、ベルギー・アントワープ(参照プラントの計画地) ・ 公式サイト
世界最大級の総合化学メーカー。2015年の売上高は700億ユーロ超、従業員約11万2,000人[3] 。合弁は中間体(Intermediates)事業部が担当し、2015年の同事業部の外部売上は約28億ユーロでした[3] 。2016年の年次報告書では、持分法適用投資の増加1億5,200万ユーロの主因としてSynvinaを挙げています[6] 。
役割 資金、量産拠点、市場開発・大規模生産の知見の提供(2019年1月に離脱)
① ニーズ・シーズ 再生可能原料由来の新しい化学品・ポリマーへの参入が狙いです。中間体事業部のBlank社長は「Synvinaで、FDCAとPEFという有望な事業に参入し、さまざまな業界の顧客の価値創出を支援する」(編集部訳)と述べています[3] 。年次報告書では、再生可能原料の活用の取り組みとして合弁を位置づけています[6] 。
② 提供リソース 合弁への現金出資5,725万ユーロ(51%)[9] 。アントワープのフェアブント(統合生産)拠点を参照プラントの建設地として提供する計画[1] [3] 。市場開発と大規模生産の専門性、中間体・ポリマー事業での実績[1] [3] 。
③ 共同活動での担当 過半株主として合弁を共同支配し(重要事項は全会一致)[9] 、参照プラントの事業性評価を合弁とともに進めました[10] 。2018年に内部の戦略見直しを経て投資基準の評価時期を2018年第4四半期と主張し、離脱権を行使しています[11] [12] 。
⑤ 確認できた成果 参照プラントの投資基準の評価時期を巡る対立の末、2019年1月15日付で合弁から離脱。持分はAvantiumに1,370万ユーロで譲渡[11] [12] [14] 離脱に伴うBASF側の損益や理由の詳細は公表されておらず、2018年の年次報告書にSynvinaの記載はない[33]
⑤ 今後の目標・期待 記載なし
4 共同活動③ 2016年3月15日、両社はFDCAの生産・販売とPEFの販売を行う合弁の設立に向けた基本合意書を結びました。合弁はAvantiumのYXY技術を使い、アントワープのBASF拠点に年産最大5万トンの参照プラントを建て、その後に技術を産業規模でライセンスする計画です[1] 。10月7日に合弁Synvinaの設立を発表し、参照プラントには「3桁の中位の百万ユーロ」(編集部訳)を投じるとしました[3] [4] [5] 。
Avantiumの年次報告書によれば、Avantiumが技術・特許・パイロットプラント・従業員を現物出資して49%、BASFが合計5,725万ユーロを現金出資して51%を持ちました。参照プラントの建設を決めるまで重要事項は全会一致で、最終投資決定(FID)までは双方が解消を申し出ることができ、解消の場合は理由を問わずAvantiumがBASFの持分を買い取り、技術と従業員はAvantiumに戻り、残余の現金はBASFに返す取り決めでした[9] 。
合弁は2017年5月にEuropean PET Bottle PlatformからPEFのリサイクルに関する暫定承認を受け、6月にはSynvinaが調整役の11社コンソーシアム「PEFerence」がEUのBBIから2,500万ユーロの助成を得ています[8] [9] 。一方、2018年1月12日、Synvinaは事業性評価の結果、工程の一部に改良が必要だとしてパイロット段階を延長し、参照プラントの稼働を24〜36か月遅らせて2023〜2024年にすると発表しました[10] 。
2018年10月15日、Avantiumは両社の対立を公表しました。BASFは内部の戦略見直しを経て、投資基準は当初の想定どおり2018年第4四半期に評価すべきで、12月5日までに満たされなければ離脱できると通告し、Avantiumは延長に伴い評価も先送りされるべきだと反論しています[11] 。12月18日、BASFは2019年1月15日付の離脱を通知しました[12] 。Avantiumは2019年1月27日、持分の買い取りに1,370万ユーロ、合弁が取得した資産に純額370万ユーロを支払って全株式を取得し、Synvinaを社内の事業部門にしています[14] 。CEOは説明会で、仲裁や訴訟を避けるための和解だと述べ、対立は技術ではなく商業化の進め方にあったと説明しています[15] 。
5 成果物と成果④⑤
成果物
合弁会社Synvina(2016年10月設立、アムステルダム。Avantium 49%・BASF 51%)[3] [9] European PET Bottle PlatformによるPEFリサイクルの暫定承認(2017年5月)と、EUのBBIによるPEFerenceコンソーシアムへの2,500万ユーロの助成(2017年6月)[8] [9] 参照プラントの事業性評価と、精製工程の技術課題の解決(2018〜2019年1月)[10] [15] 解消後にAvantiumが単独で建設した年産5,000トンのFDCAフラッグシップ工場(デルフザイル、2024年10月完工、2026年9月初生産)[23] [30] 合弁の支出総額は、2019年1月の説明会でCFOが「約4,000万ユーロ」と概算しています[15] 。合弁の年間の支出は、Avantiumの49%持分ベースで1,000万〜1,500万ユーロでした(CFO、2018年12月)[13] 。Synvinaの2017年の純損失は1,231万ユーロ(100%ベース)です[9] 。BASF側の損益は公表されていません。Avantiumの数値は、解消時の支払いが1,370万ユーロと370万ユーロ(2019年1月のリリース)[14] 、合計1,740万ユーロ(2018年決算)[16] です。
未確認・留意点 出資比率は、候補調査で「BASF 49%・Avantium 51%」と報じられていましたが、Avantiumの年次報告書2017、2018年12月のCFOの説明、2021年の資料、Börsen-Zeitungの報道はいずれも Avantium 49%・BASF 51% です[5] [9] [13] [21] 。本ページは後者を採用しています BASF側の離脱理由の公式説明は、Avantiumのリリースが伝える「内部の戦略見直し」と「投資基準は2018年第4四半期に評価する」という主張にとどまります[11] 。BASFの2018年の年次報告書にSynvinaの記載はなく[33] 、離脱に伴うBASF側の損益は未確認です。2019年1月の説明会でアナリストが「BASFは約3,900万ユーロの損失」と述べていますが、Avantiumはこの数値には答えていません[15] 合弁契約の投資基準の内容は、Avantiumの上場目論見書(2017年3月3日付)188ページに記載があるとされますが[11] 、目論見書は未閲覧です BASF持分の買い取り額は、リリースで1,370万ユーロ、説明会では1,360万ユーロと表記が揺れています[14] [15] 合弁の設立日は、発表が2016年10月7日、法的な設立が11月30日、経済的な効力発生が7月1日です[3] [9] 候補調査にあった「2026年10月に初のFDCAバッチ」の報は確認できず、確認できたのは2026年9月28日の初バッチ生産の発表です[30] 。2026年10月13日時点で商業出荷の発表はありません Avantiumは2026年上半期の決算で継続企業の前提に重要な不確実性があると注記しており、現金は2,390万ユーロ(制限付き含む)、増資は2026年第4四半期に予定されています[31] 。フラッグシップ工場は2025〜2026年に配管のチタン溶接の品質問題で稼働が遅れ、追加の設備投資700万ユーロが生じています[27] BASFの規模は2015年の数値で、現在の規模は未確認です[3]
6 組み合わせの意味編集部の考察 考察 この組み合わせは、技術を持つ小さな会社が、資金・生産拠点・量産の知見を持つ大手と合弁を組み、一気に商業規模へ進もうとした型です。解消時に技術と人員が技術側に戻る条項[9] があったため、合弁が終わっても事業を続けられたと考えられます。
一方で、合弁契約が置いた投資判断の時期と、開発の実際の進み方がずれたときの脆さも示しています。契約は投資基準を2018年第4四半期に評価する前提でしたが、2018年1月に計画が24〜36か月延びました[10] [11] 。Avantiumは評価も先送りされるべきだと考え、BASFは当初の期限を主張し[11] 、契約にはこの食い違いを解く仕組みがなかったとみられます。技術課題は解消前に解決しており[15] 、直接の原因は技術ではなく契約の解釈と商業化方針の違いだったと推察できます。CEOは、大量用途向けの5万トンに急ぐBASFと、高付加価値用途から入りたいAvantiumの違いを挙げ、大企業を「石油タンカー」に例えています[15] 。重要事項が全会一致だったこと[9] を踏まえると、規模と参入順序で見方が分かれた時点で合弁は進めなくなった可能性があります。
解消の代償は小さくなく、Avantiumは買い取りに1,740万ユーロを払い、2018年決算で5,000万ユーロの一時費用を計上しました[16] [17] 。上場で得た現金(2018年末8,330万ユーロ)があったから持ちこたえたとみられます[16] 。その後、規模を10分の1の5,000トンに縮め、EU助成、地域の投資機関、銀行団と政府系機関の融資を組み合わせて単独で工場を建てましたが[18] [19] [20] [22] 、初生産は2026年9月で、合弁が想定した2023〜2024年の稼働[10] より遅れています[30] 。大手の資本を公的資金と借入で置き換えると、時間と財務の負担が技術側に集まることがうかがえます。
7 他社への応用編集部の考察 考察 この型は、素材・化学・バイオなどで、研究開発型企業の製法技術を大手が合弁で商業規模に引き上げる場合に当てはまると考えられます。条件の第一は、投資判断のゲートと、開発が遅れたときの扱いを事前に決めることです。本事例では延長が評価時期を延ばすのかが契約上あいまいで、対立の核になりました[11] 。第二は、最初の工場の規模と市場参入の順序を合弁前に合意し、見直しの手順も決めておくことです[15] 。第三は解消時の取り決めで、技術と人員が戻る条項[9] は継続を支えましたが、持分の買い取り義務は技術側の負担になりました[16] [17] 。買い取りに耐える資金か、算定式を事前に持つ必要があると考えられます。
大手側の内部の戦略見直しが相手の事業計画を左右することも示しています[11] [12] 。技術側は、公的助成や地域の投資機関、銀行団など代替の資金調達経路を早めに探っておくことが望ましいでしょう[19] [20] 。CEOは「前のパートナーを別の大手化学会社に置き換えて同じ道を進むのは論理的でない」(編集部訳)と述べており[15] 、相手だけを替えるのではなく、規模と資金の組み方を見直すことが要点とみられます。
成立に必要な条件
商業プラントの投資判断のゲートと、技術開発が遅れたときに評価時期をどう扱うか(延長の上限を含む)を契約で決めておくこと[10] [11] 最初の工場の規模と市場参入の順序(大量用途か高付加価値用途か)について合弁前に合意し、見直しの手順も定めること[15] 解消時に技術・知財・人員が技術側に戻る条項を置くこと[9] 技術側が持分の買い取り義務に耐えられる資金を持つか、買い取り額の算定方法を事前に決めておくこと[9] [16] [17] 大手の戦略見直しによる離脱を織り込み、公的助成・地域の投資機関・銀行団など代替の資金調達経路を早めに確保すること[19] [20] [22] 全会一致の共同支配のもとでは、方針が分かれた時点で合弁が止まることを前提に、意思決定の仕組みを設計すること[9]