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共創事例
かつお一本釣り漁船の魚艙温度を見える化し、魚の品質向上につなげる
有限会社浅野水産(中小企業) × 株式会社ライトハウス(スタートアップ) × 株式会社オーシャンアイズ(スタートアップ)
日本 宮崎県日南市 PoC 枠組み 宮崎県×eiicon「MIYAZAKI DIGITAL INNOVATION BUSINESS BUILD」(2021年度) 情報確認日 2026年10月3日
宮崎県とeiiconが実施した共創プログラム「MIYAZAKI DIGITAL INNOVATION BUSINESS BUILD」で、浅野水産がホスト企業として課題を公開し、2社のスタートアップが合同で提案して採択された事例です[2] [5] 。かつお一本釣り漁船「第五清龍丸」の魚艙(魚倉)の温度を、ライトハウスが見える化し、オーシャンアイズが蓄積・解析する「魚艙温度管理プラットフォーム」の実証を2022年4月に開始しています[1] 。
目次
共創の構造 背景と各組織の狙い 提供資源と役割 共同活動 成果物と成果 組み合わせの意味 他社への応用 出典 関連事例
1 共創の構造図解:共創プロジェクトの形
かつお一本釣り漁船の魚艙温度を見える化し、魚の品質向上につなげる:共創の構造(浅野水産、ライトハウス、オーシャンアイズ) プロジェクト全体の段階 探索 PoC 共同開発 事業化 スケール Before| 起点 During| 共創 After| 成果 A 浅野水産 1 ニーズ・シーズ 機関長の高齢化に備えて機関業務を効率化し、 漁獲量の上限の下で魚の品質・魚価を上げたい 2 提供リソース 現役のかつお一本釣り漁船(実証フィールド)、 操業データ、業界内のネットワーク A 浅野水産の成果 5 獲得成果 確認できた成果 2社合同提案の採択、魚艙温度の見 える化の実証開始(結果は未公表) 今後の目標・期待 機関業務の効率化、かつおの品 質向上による差別化と魚価向上 B ライトハウス 1 ニーズ・シーズ 船舶IoT「ISANA」を現役の漁船で検証 し、高付加価値漁法向けに展開したい 2 提供リソース 船舶IoT「ISANA」、魚艙温度を船内 どこでも確認できる見える化システム B ライトハウスの成果 5 獲得成果 確認できた成果 魚艙温度の見える化システムを構築し、実証を開始 今後の目標・期待 高付加価値漁法向けのサブスクリプショ ン展開(国内漁船10万隻の構想) C オーシャンアイズ 1 ニーズ・シーズ 海洋データの解析技術を実際の操業データに適 用したい(合同提案。個別の狙いは未確認) 2 提供リソース 海洋データの解析技術 C オーシャンアイズの成果 5 獲得成果 確認できた成果 合同提案の採択、温度データの蓄積・解析の実証開始 今後の目標・期待 操業データの解析による操業 判断の支援(提案時の構想) 3 共同活動 魚艙温度を船内どこでも確認でき る仕組みを作り、温度データを蓄 積・解析(2022年4月実証開始) 4 成果物 魚艙温度管理プラット フォーム(実証段階)
Before起点 A 浅野水産
① ニーズ・シーズ 機関長の高齢化に備えて機関業務を効率化し、漁獲量の上限の下で魚の品質・魚価を上げたい
② 提供リソース 現役のかつお一本釣り漁船(実証フィールド)、操業データ、業界内のネットワーク
B ライトハウス
① ニーズ・シーズ 船舶IoT「ISANA」を現役の漁船で検証し、高付加価値漁法向けに展開したい
② 提供リソース 船舶IoT「ISANA」、魚艙温度を船内どこでも確認できる見える化システム
C オーシャンアイズ
① ニーズ・シーズ 海洋データの解析技術を実際の操業データに適用したい(合同提案。個別の狙いは未確認)
② 提供リソース 海洋データの解析技術
During共創 ③ 共同活動 魚艙温度を船内どこでも確認できる仕組みを作り、温度データを蓄積・解析(2022年4月実証開始)
④ 成果物 魚艙温度管理プラットフォーム(実証段階)
After成果 A 浅野水産の成果
⑤ 獲得成果 確認できた成果 2社合同提案の採択、魚艙温度の見える化の実証開始(結果は未公表) 今後の目標・期待 機関業務の効率化、かつおの品質向上による差別化と魚価向上
B ライトハウスの成果
⑤ 獲得成果 確認できた成果 魚艙温度の見える化システムを構築し、実証を開始 今後の目標・期待 高付加価値漁法向けのサブスクリプション展開(国内漁船10万隻の構想)
C オーシャンアイズの成果
⑤ 獲得成果 確認できた成果 合同提案の採択、温度データの蓄積・解析の実証開始 今後の目標・期待 操業データの解析による操業判断の支援(提案時の構想)
プロジェクト全体の段階
探索 PoC 共同開発 事業化 スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:PoC 2021年12月の採択
[2] [5] と約3か月のインキュベーションを経て、2022年4月25日に実証開始が発表されています
[1] 。実証の期間、結果、事業化の有無は公開情報で確認できません(2026年10月時点)。
2 背景と各組織の狙い浅野水産は、2019年にデータ分析スタートアップとの共創で操業日誌のAI化に取り組んでおり、本事例はそれに続く2件目の共創です[3] 。2021年のインタビューで浅野氏は、オープンイノベーションでは「技術の売り込み」のような提案を受けることがあるが、求めているのは「共に課題を解決していけるパートナーのような存在」だと述べています[3] 。
課題の背景には、2つの変化がありました。一つは、機関長の高齢化と技術伝承の問題です[3] 。もう一つは、改正漁業法によって漁獲量に上限が設けられ、量を増やす経営から、魚の品質を上げて魚価を高める経営への転換が必要になったことです[3] 。魚艙の温度管理は、品質を左右する要素でありながら、機関室でしか確認できない状態でした[1] 。
宮崎県とeiiconのプログラムは、この課題をテーマとして全国に公開し、提案を募る場を提供しました[4] 。ライトハウスは福岡、オーシャンアイズは京都の企業で、県外の2社が合同で提案しています[2] 。
3 提供資源と役割
A 有限会社浅野水産 中小企業・宮崎県日南市 ・ 公式サイト
近海かつお一本釣り漁船「第五清龍丸」(119トン)を操業する漁業者[1] [4] 。日南のかつお一本釣りは300年以上の歴史を持ち、漁獲量は27年連続全国1位[1] 。
役割 ホスト企業(課題の提示と実証フィールドの提供)
① ニーズ・シーズ プログラムで提示した募集テーマは、沖合の通信環境、機関業務の効率化、水産バリューチェーンの再構築の3つでした[3] [4] 。背景には、機関長の高齢化と技術伝承の課題に加え、改正漁業法による漁獲量の上限があり、量を増やすのではなく、魚の品質を上げて魚価を高める方向への転換が求められていました[3] 。
② 提供リソース 実証フィールドとしての現役の漁船「第五清龍丸」[1] 。募集時には、各種データと、漁業組合など業界内のネットワークも提供可能な資源として示していました[4] 。浅野氏は「最大のリソースは、浅野水産の船舶です。船舶を利用した実証実験では、現場のリアルな課題に出会うことができるはずです」と述べています[3] 。
③ 共同活動での担当 課題をテーマとして公開し、選考に参加。採択後は第五清龍丸を実証の場として提供[1] [3] 。
⑤ 確認できた成果
⑤ 今後の目標・期待 機関場業務の効率化[1] かつおの品質向上による差別化と魚価の向上[1]
B 株式会社ライトハウス スタートアップ・福岡県福岡市 ・ 公式サイト
2017年設立。海洋船舶IoTサービス「ISANA」を提供するスタートアップ[7] 。
役割 データ収集・見える化
① ニーズ・シーズ 船舶IoTを現場の漁船で検証し、高付加価値な漁法向けにサブスクリプションとして展開する構想を持っていました[2] 。「水産業者さんにご協力いただかないと何も変わりません」と述べており、現場の協力を得られる機会が必要でした[2] 。
② 提供リソース 海洋船舶IoTサービス「ISANA」による船舶データの自動収集[2] 。実証では、魚艙温度を見える化し、操舵室を含む船内のどこでも確認できるシステムを構築しました[1] 。
③ 共同活動での担当 魚艙温度の見える化システムを構築し、船舶データを収集[1] [2] 。
⑤ 確認できた成果
⑤ 今後の目標・期待 高付加価値漁法向けのサブスクリプション展開。最終的に国内漁船10万隻を目指す構想(提案時)[2]
C 株式会社オーシャンアイズ スタートアップ・京都府京都市 ・ 公式サイト
2019年設立。京都大学とJAMSTECの研究者が出資して設立された、海洋データ解析のスタートアップ[8] 。
役割 データの蓄積・解析
① ニーズ・シーズ 公開情報では、本件に関する個別の狙いの記述は確認できていません。ライトハウスとの合同提案として、海洋関連データの解析技術を実際の操業データに適用し、操業判断の支援につなげる構想を共有していました[2] 。
② 提供リソース 海洋関連データの解析技術[2] 。実証では、魚艙の温度データを収集・蓄積し、解析します[1] 。
③ 共同活動での担当 魚艙の温度データを蓄積・解析[1] 。
⑤ 確認できた成果
⑤ 今後の目標・期待 操業・漁獲・魚倉機器のデータをクラウドに集め、解析結果を共有して操業判断を支援する仕組みへの発展(提案時の構想)[2]
4 共同活動③ 宮崎県とeiiconが実施した「MIYAZAKI DIGITAL INNOVATION BUSINESS BUILD」は、県内のホスト企業が課題をテーマとして公開し、全国の企業・スタートアップから提案を募る形式のプログラムです[4] 。浅野水産は、沖合の通信環境、機関業務の効率化、水産バリューチェーンの再構築という3つのテーマを提示しました[3] [4] 。プログラムには38社が応募し、8社が書類選考を通過[5] [6] 。2021年12月3日・4日に宮崎市で開催されたビジネスビルドで、ライトハウスとオーシャンアイズの合同提案「水産業のニュースタンダードを社会実装」が採択されました[2] [5] 。
提案の構想は、ライトハウスの船舶IoT「ISANA」による船舶データの自動収集と、オーシャンアイズの海洋関連データの解析技術を組み合わせ、操業・漁獲・魚倉機器のデータをクラウドに集め、解析結果を共有して操業判断を支援するというものでした[2] 。採択後は約3か月のインキュベーション期間を経て[4] [6] 、2022年3月11日のDEMO DAYで成果を発表[6] 。採択企業には1社あたり上限50万円の事業検証費用の補助がありました[4] 。
実証は構想のうち、魚艙の温度管理から着手しました。第五清龍丸では、魚艙の温度をこれまで機関室でしか確認できませんでした[1] 。これをライトハウスが見える化し、操舵室を含む船内のどこでも確認できるシステムを構築[1] 。オーシャンアイズが温度データを収集・蓄積し、解析します[1] 。2022年4月25日に実証開始が発表され、「3社による共創を蓄積し、漁業界全体の生産性が向上する新たなサービスの開発を目指します」とされています[1] 。
5 成果物と成果④⑤
成果物
「魚艙温度管理プラットフォーム」。魚艙温度を船内どこでも確認できる見える化システムと、温度データの蓄積・解析(実証段階)[1]
未確認・留意点 実証の期間、結果、費用、事業化の有無は公開されていません 実証開始のリリース[1] では、ライトハウスの役割が「データ収集」と「見える化」、オーシャンアイズの役割が「分析・解析」と「収集・蓄積・解析」の両方で書かれており、分担の境界は明確ではありません 費用負担、契約形態、データと知財の扱いは公開されていません 浅野水産は2019年にFACTORIUMとの共創(操業日誌のAI化)も行っており[3] 、本事例とは別のプロジェクトです
6 組み合わせの意味編集部の考察 考察 この事例の特徴は、2社のスタートアップが「データを取る」技術と「データを解く」技術を持ち寄り、1つの提案にまとめた点にあると考えられます[2] 。船舶IoTだけでは、温度を測って表示できても、蓄積したデータを品質や操業の判断につなげる解析までは難しく、海洋データ解析だけでは、現場のデータを取る手段がないとみられます。単独では「取る」か「解く」の片方にとどまる2社が組んだことで、ホスト企業の課題に一つの仕組みとして提案できたと推察できます。
浅野水産側が提供した価値は、現役の漁船という実証フィールドにあったとみられます[1] [3] 。洋上の船には、通信、振動、塩害など陸上とは異なる条件があり、現場で動かして初めて分かる課題も多いと考えられます。浅野氏が「船舶を利用した実証実験では、現場のリアルな課題に出会うことができる」と述べていることからも[3] 、スタートアップにとっては他では得にくい検証の場だったと推察できます。
課題の設定も効いていたと考えられます。漁獲量の上限という外部要因が「量から質へ」の転換を迫り[3] 、温度管理という具体的で測定可能なテーマに落とし込まれました。自治体のプログラムは、課題の公開、選考、約3か月のインキュベーション、少額の検証費用[4] [6] という形で、初期の実証を成立させる枠組みになっていたとみられます。
7 他社への応用編集部の考察 考察 この型は、現場(船、工場、農場、店舗など)を持つ中小の事業者が、ホスト企業として課題を公開し、複数のスタートアップを受け入れる場合に応用できると考えられます。中小事業者にとっては、自社で技術を探す代わりに、課題を言語化して公開することで、組み合わせの提案を受けられる利点が期待できます。
本事例からは、成立の鍵の一つは、課題を「テーマ」として言語化できることだと推察できます。本事例では、通信環境、機関業務、バリューチェーンという3つのテーマが示され[3] [4] 、提案側はその中から着手点(魚艙温度)を選びました。課題が抽象的なままだと、提案は技術の売り込みになりやすく、ホスト側が求める「共に課題を解決するパートナー」[3] にはなりにくいと考えられます。
一方、本事例は実証開始の発表以降、結果が公開されていません。公的プログラムで始まった共創では、プログラム終了後に誰が費用を負担し、どう続けるかが課題になりやすいとみられます。複数のスタートアップが関わる場合は、データの所有・利用、成果の帰属、各社の役割の境界を明文化しておくことが、継続の条件の一つになると考えられます。
成立に必要な条件
ホスト企業が、課題を具体的なテーマとして言語化し、公開できること[3] [4] ホスト側が「技術の売り込み」ではなく「共に課題を解決するパートナー」を求める姿勢を示すこと[3] 複数のスタートアップが組む場合、「取る」「解く」など役割の分担と境界を明確にすること 現場での実証に必要な条件(洋上の通信環境、安全、季節性)を事前に確認すること 検証費用の補助やインキュベーションなど、初期の実証を支える枠組みがあること[4] [6] プログラム終了後の費用負担と継続の方法、データ・成果の帰属を取り決めておくこと