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共創事例

信用組合の加盟店網とアプリ会社の決済基盤で、電子地域通貨を行政も使う地域インフラに育てる

飛騨信用組合(中小企業) × 株式会社アイリッジ(スタートアップ)

日本岐阜県高山市・飛騨市・白川村スケール情報確認日 2026年10月13日

岐阜県飛騨地域の協同組織金融機関である飛騨信用組合と、東京のアプリ開発会社アイリッジの共創です。2016年11月に協業を発表し、職員を対象にした実証実験を経て、2017年12月に加盟店約100店舗で電子地域通貨「さるぼぼコイン」の提供を始めています[1][2][5]。飛騨信組が発行主体として加盟店開拓と窓口でのチャージを担い、アイリッジ(のちに子会社フィノバレー)が決済基盤「MoneyEasy」を提供する分担で、2026年3月末には加盟店2,153店舗、ユーザー37,534名、累計決済金額約156億円に達しています[4][20]。飛騨市・高山市の公金収納や給付金のプレミアム上乗せにも使われ、基盤は全国18の自治体・地域に広がっています[8][12][31]。

1共創の構造図解:共創プロジェクトの形

信用組合の加盟店網とアプリ会社の決済基盤で、電子地域通貨を行政も使う地域インフラに育てる:共創の構造(飛騨信用組合、アイリッジ)プロジェクト全体の段階探索PoC共同開発事業化スケールBefore|起点During|共創After|成果A飛騨信用組合1ニーズ・シーズ域内の資金流通と観光客の決済を電子地域通貨で促し、店舗負担の少ない仕組みで地域を活性化したい2提供リソースさるぼぼ倶楽部の加盟店網と組合員基盤、窓口でのチャージと説明、自治体との関係、新会社への出資A飛騨信用組合の成果5獲得成果確認できた成果加盟店2,153店舗・ユーザー37,534名・累計決済約156億円(2026年3月末)、大臣表彰、新規取引の増加今後の目標・期待機能強化と行政連携による地域課題の解決、ふるさと納税ポイントによる域外からの資金流入Bアイリッジ1ニーズ・シーズO2O技術を金融に転用し、地域金融機関向けフィンテック基盤の第一弾実績を作って全国展開したい2提供リソース決済基盤「MoneyEasy」とアプリ開発力、ブロックチェーン検証、口座連携・ATM・公金収納などの機能追加Bアイリッジの成果5獲得成果確認できた成果基盤が全国18地域に展開、事業を子会社化して出資を受け、2025年にTISへ14.5億円で譲渡今後の目標・期待承継したTISがデジタル地域通貨領域で2029年度に売上20億円規模を目指す3共同活動2017年の職員実証から12月に約100店舗で商用化。口座連携・ATM・公金収納・給付金プレミアム・ふるさと納税へ機能を広げた4成果物さるぼぼコインアプリと決済基盤MoneyEasy、公金収納・給付金プレミアム・ふるさと納税ポイントなどの行政連携機能

Before起点

A飛騨信用組合

① ニーズ・シーズ域内の資金流通と観光客の決済を電子地域通貨で促し、店舗負担の少ない仕組みで地域を活性化したい
② 提供リソースさるぼぼ倶楽部の加盟店網と組合員基盤、窓口でのチャージと説明、自治体との関係、新会社への出資

Bアイリッジ

① ニーズ・シーズO2O技術を金融に転用し、地域金融機関向けフィンテック基盤の第一弾実績を作って全国展開したい
② 提供リソース決済基盤「MoneyEasy」とアプリ開発力、ブロックチェーン検証、口座連携・ATM・公金収納などの機能追加

During共創

③ 共同活動2017年の職員実証から12月に約100店舗で商用化。口座連携・ATM・公金収納・給付金プレミアム・ふるさと納税へ機能を広げた
④ 成果物さるぼぼコインアプリと決済基盤MoneyEasy、公金収納・給付金プレミアム・ふるさと納税ポイントなどの行政連携機能

After成果

A飛騨信用組合の成果

⑤ 獲得成果確認できた成果加盟店2,153店舗・ユーザー37,534名・累計決済約156億円(2026年3月末)、大臣表彰、新規取引の増加今後の目標・期待機能強化と行政連携による地域課題の解決、ふるさと納税ポイントによる域外からの資金流入

Bアイリッジの成果

⑤ 獲得成果確認できた成果基盤が全国18地域に展開、事業を子会社化して出資を受け、2025年にTISへ14.5億円で譲渡今後の目標・期待承継したTISがデジタル地域通貨領域で2029年度に売上20億円規模を目指す

プロジェクト全体の段階

探索PoC共同開発事業化スケール
①ニーズ・シーズ ②提供リソース ③共同活動 ④成果物 ⑤獲得成果。図の内容は本文と同じ出典に基づきます。
段階:スケール 2017年12月4日に商用化し[5]、2026年3月末時点で加盟店2,153店舗、ユーザー37,534名、累計決済金額約156億円と、飛騨信組の開示資料で毎年増え続けています[17][18][19][20]。2026年3月には8周年記念キャンペーンと高山市の電子商品券の取り扱いが続いており[26][27]、飛騨市・高山市の公金収納、給付金のプレミアム上乗せ、ふるさと納税の返礼品にも用途が広がっています[8][10][12][24]。一方、決済基盤を提供するフィノバレーは2025年7月にアイリッジからTISへ全株式が譲渡され[29][32]、基盤の提供元は変わっています。地域での運用が定着し、行政サービスと基盤の他地域展開の両面に広がっている段階と判断しています(2026年10月時点)。

2背景と各組織の狙い

飛騨信用組合は、岐阜県の高山市・飛騨市・白川村を営業区域とする協同組織の地域金融機関です[20][21]。2016年4月からの中期経営計画で「CSV経営」を掲げ、人口減少が進む地域で、取引先の成長を後押ししながら自身の収益力も高めることを課題としていました[1]。高山市には2016年に約450万人の観光客が訪れ、インバウンド向けの決済手段も求められていました[2]。一方、地域ではクレジットカードの手数料負担が大きく、決済の電子化は進んでいませんでした[6]。飛騨信組には2012年に始めた組合員向け優待サービス「さるぼぼ倶楽部」の加盟店網があり[1][21]、高山市と飛騨市の指定金融機関でもありました[21]。

アイリッジは2008年設立のアプリ開発会社で、位置情報連動型のプッシュ通知などO2O領域に実績を持ち、2015年に東証マザーズに上場していました[29]。2017年当時は従業員61名、売上高16億円規模で、O2O技術を金融領域に転用する「FinTech領域」を新たな柱にしようとしており、電子地域通貨はその第一弾でした[3]。2016年の発表では、基盤を「全国の金融機関や自治体等に向けて提供を開始」するとし、店舗に決済端末を不要にして手数料を抑え、コインにプレミアムと有効期限を付けて域内の利用を促す構想を示しています[1]。

3提供資源と役割

A飛騨信用組合 中小企業・岐阜県高山市 ・ 公式サイト

1954年設立の協同組織の地域金融機関(信用組合)。高山市・飛騨市・白川村を営業区域とし、2026年3月末で組合員23,829名、役職員160名、店舗16か店、預金積金残高3,110億円、貸出金残高1,141億円[20][21]。1999年に高山市、2009年に飛騨市の指定金融機関になり、2012年に組合員向け優待サービス「ひだしんさるぼぼ倶楽部」を発足させています[21]。

役割
発行主体、加盟店開拓・ユーザー獲得・運営
① ニーズ・シーズ
人口減少と過疎化が進む中で、地域内の資金流通(お金の地産地消)を促して地域経済を活性化し、年間約450万人(2016年)の観光客向けの決済手段を簡素化することが狙いでした。2016年4月からの中期経営計画で掲げたCSV経営の一環で、金融機関自身の収益にも資するモデルを目指しています[1][2][5]。高山地域ではクレジットカードの手数料負担が大きく決済の電子化が進んでおらず、店舗の負担が少ない仕組みが必要だと担当役員は述べています[6]。
② 提供リソース
組合員と家族が加盟店で優待を受ける会員制サービス「さるぼぼ倶楽部」の加盟店網を導入の起点にし[1][3]、発行主体として窓口でのチャージとユーザー登録、加盟店開拓を担いました[5][16]。高齢者にも窓口で丁寧に説明して利用を広げたと飛騨市は記しています[16]。全職員約200名が実証実験に参加し[2]、トーマツベンチャーサポートとビジネススキームを策定[1]。2018年には自身と運営ファンド(飛騨・高山さるぼぼ結ファンド2号)がアイリッジの電子地域通貨事業の新会社に出資しています[7]。市の指定金融機関としての関係を生かし、飛騨市・高山市との連携(窓口手数料・市税の収納、覚書)を進めました[8][10][21]。
③ 共同活動での担当
発行主体として加盟店の開拓、窓口チャージ、ポイント還元などのキャンペーン、行政と連携したプレミアム付与・公金収納・ふるさと納税の企画運営を担当。実証実験には全職員が参加した[2][5][12][14][23]。
⑤ 確認できた成果
  • 加盟店は商用化時の約100店舗から、2018年9月に750店舗超、2019年7月に1,000店舗、2026年3月末に2,153店舗へ増加[5][8][10][20]
  • ユーザー数は2019年7月の8,000名超から2026年3月末に37,534名、累計決済金額は約156億円(2026年3月末)[10][20]
  • 2021年3月、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の「地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」で大臣表彰(信組業界で唯一)[14][21]
  • 2026年の開示資料で、クラウドファンディングなど取引先支援を通じて「さるぼぼコイン加盟店の登録などの付帯取引増加」につながったと記載[20]
  • 飛騨市のプレミアム電子地域通貨(2020年)は販売額181,984,000円、飛騨市民の約4人に1人がユーザー(2022年4月時点、飛騨市資料)[16]
⑤ 今後の目標・期待
  • 機能強化と利用機会の拡大により地域課題の解決を図り、地域のDX推進を支援する(2026年開示資料)[20]
  • ふるさと納税ポイントの流通により、観光客の入込増加、地域外からの資金流入、域内消費の拡大を促す[20][23]
実現したいこと地域・社会課題の解決新商品・サービス開発販路・顧客の拡大
持っている資源顧客接点・顧客基盤販売網・物流網ブランド・コンテンツ専門人材・ノウハウ資金

B株式会社アイリッジ スタートアップ・東京都港区 ・ 公式サイト

2008年設立のO2O(オンラインからの実店舗への送客)支援・アプリ開発会社。2015年7月に東証マザーズに上場し、協業当時は従業員61名(2017年4月末)、2017年7月期の売上高予想16億円の小規模な上場企業でした[3][29]。2018年6月に電子地域通貨事業を子会社フィノバレーへ承継し、2025年7月にその全株式をTISへ譲渡しています[29][31][32]。2026年3月末の従業員は220名[30]。本ページでは協業開始時の規模に合わせてスタートアップとして分類しています。

役割
決済基盤「MoneyEasy」とアプリの開発・提供
① ニーズ・シーズ
スマートフォンアプリと位置情報連動型プッシュ通知で培ったO2O技術を金融分野に転用し、地域密着型の金融機関向けフィンテックソリューションの第一弾として実績を作り、全国の金融機関や自治体に展開することが狙いでした[1][3]。決済や売上データの見える化によるマーケティングや、取引履歴を使う融資(トランザクションレンディング)への発展も構想していました[1][2]。
② 提供リソース
電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」(スマホアプリでのチャージからQRコード決済まで、店舗側は二次元コードの設置のみで導入)とアプリ開発の実績[4][5]。実証実験ではデジタルガレージのDG Labとブロックチェーン技術の検証も行いました[2][4]。商用化後は預金口座連携、セブン銀行ATMからのチャージ、納付書バーコードの読み取りによる公金収納、現地決済型ふるさと納税などの機能を順次追加しています[8][9][11][24][32]。
③ 共同活動での担当
プラットフォームの企画・開発と実証実験の技術検証を担い、商用化後はフィノバレーとして機能追加と運用を担当。さるぼぼコインの実績を基に他地域へ展開した[1][4][7][11][31]。
⑤ 確認できた成果
  • 第一弾のさるぼぼコインを起点に、「MoneyEasy」が木更津市「アクアコイン」、世田谷区「せたがやPay」、岐阜県「ぎふ旅コイン」など全国18の自治体・地域に導入(2025年3月時点)[7][15][31]
  • 2018年6月、電子地域通貨事業を新会社フィノバレーに承継し、デジタルガレージ、日本ATM、飛騨信用組合、飛騨・高山さるぼぼ結ファンド2号から出資(合計11.5%)を受けた[7]
  • 2025年7月、フィノバレーの全株式(121,500株)をTISへ14億5,000万円で譲渡[31][32]
⑤ 今後の目標・期待
  • フィノバレーを承継したTISは、2029年度までにデジタル地域通貨領域で売上高20億円規模を目指すとしている[32]
実現したいこと新商品・サービス開発技術開発・実用化販路・顧客の拡大
持っている資源技術・知財専門人材・ノウハウ

4共同活動③

2016年11月30日、アイリッジと飛騨信用組合は、スマートフォンアプリを使った電子地域通貨の導入を発表しました。発行主体は飛騨信組、導入は「さるぼぼ倶楽部」の加盟店から始め、ビジネススキームは飛騨信組とトーマツベンチャーサポートが策定しました[1][3]。2017年5月15日から8月20日まで、飛騨信組の全職員を対象に3か所の店舗で実証実験を行い、ブロックチェーン技術の検証も並行しています[2][4]。

2017年12月4日、高山市・飛騨市・白川村の約100店舗で商用化しました。利用者は飛騨信組の窓口で現金をチャージし(上限10万円、1%のポイント付与)、店舗は二次元コードを置くだけで導入できます[5]。加盟店の換金手数料は1.5%、加盟店間の送金は0.5%で、2018年3月末まで手数料無料とポイント2倍のキャンペーンを行いました[5][6]。2018年3月には預金口座との連携を始めています[6][8]。

2018年6月、アイリッジは電子地域通貨事業を新会社(フィノバレー)に承継し、飛騨信組と運営ファンドを含む4者が出資しました[7]。その後、2018年10月に飛騨市役所の窓口手数料、2019年4月に飛騨市、7月に高山市の市税等の納付に対応し[8][9][10]、2020年3月には全国のセブン銀行ATMからのチャージを始めています[11]。

2020年5月には、飛騨市が特別定額給付金に合わせて市民全員にプレミアム(20〜34%)を上乗せする電子地域通貨を発行し、開始6日間でチャージ総額6,691万円に達しました[12][13]。販売額は181,984,000円でした[16]。2021年10月には岐阜県の観光クーポン「ぎふ旅コイン」にも同じ基盤が採用されています[15]。2023年11月からは飛騨信組が高山市・飛騨市のふるさと納税の返礼品として「ふるさと納税ポイント」を出品し[23][33]、2024年3月に現地決済型のふるさと納税[24]、同年7月に飛騨市の子育て世帯応援ポイント、2026年3月に高山市の電子商品券の受け皿にもなっています[25][27]。

5成果物と成果④⑤

成果物

  • 電子地域通貨「さるぼぼコイン」アプリ(2017年12月4日商用化。QRコード決済、窓口・口座・セブン銀行ATMからのチャージ、ユーザー間送金)[5][8][11]
  • 電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」(アイリッジ開発、2018年からフィノバレーが提供。18の自治体・地域に導入)[4][7][31]
  • 飛騨市・高山市の窓口手数料・市税等の収納機能(2018年10月〜2019年7月)[8][9][10]
  • 飛騨市がんばれプレミアム電子地域通貨(2020年5月、販売額181,984,000円)と、まるごと大売出し等のポイント還元事業[12][16]
  • ふるさと納税ポイント(2023年11月)と現地決済型ふるさと納税(2024年3月)、飛騨市子育て世帯応援ポイント(2024年7月)、高山市の電子商品券(2022年、2026年)[23][24][25][27][28]

加盟店数・ユーザー数・累計決済金額は飛騨信用組合のディスクロージャー誌の各年3月末の値です(2023年版は「累計流通額」、2024年版以降は「累計決済金額」と表記)[17][18][19][20]。年間の決済額は開示されておらず、累計の差から2025年度は約27億円と計算できますが、編集部の計算値です。アイリッジ・フィノバレー側のさるぼぼコインに関する売上や、飛騨信組の手数料収入は公開されていません。飛騨市の数値(販売額、市内加盟店数、利用者比率)は内閣官房のデジ田メニューブックに飛騨市が報告した2022年4月30日時点の値です[16]。

未確認・留意点
  • 両者の契約形態(開発委託か共同事業か)は一次資料に明記がありません。当初の発表は「協業」「企画・開発」、2018年以降は「飛騨信用組合とフィノバレーが取り組む地域通貨」「MoneyEasyを採用」と表現されており[1][7][8]、本ページは発行主体と基盤提供者の役割分担として記述しています
  • 2018年の新会社への出資比率は4者合計で11.5%とだけ公表され、飛騨信組と運営ファンドの個別の出資額は未確認です[7]。2025年のTISへの譲渡では、少数株主5名の株式をアイリッジが取得したうえで譲渡する予定とされており[31]、飛騨信組の持分がどう扱われたかは個別には確認できていません
  • 実証実験の対象者数は、アイリッジの決算資料では230名[3]、プレスリリースでは約200名[2]と異なります
  • 2017年の発表はブロックチェーン技術の活用を掲げていましたが[1]、2018年の取材で飛騨信組の役員は「具体的に運用するのは時期尚早」と述べており[6]、商用サービスでのブロックチェーンの採用は確認できません
  • フィノバレーの株主には2020年に君津信用組合、2022年に三菱電機が第三者割当増資で加わっています[34][35]。2025年7月以降はTISの完全子会社で、さるぼぼコインの基盤提供がどのような契約で続いているかは公表されていません[32]
  • 飛騨信組の公式ページは加盟店を「約2,000店舗」と記しており、開示資料の2,153店舗(2026年3月末)とは丸め方が異なります[20][22]
  • 「金融機関による地域通貨の電子化は業界初」「金融機関が発行する日本初の電子地域通貨」は当事者の発表による表現です[1][7]
  • 高山市・飛騨市のふるさと納税ポイントの寄付額や利用実績、2026年3月以降の加盟店数・ユーザー数は確認できていません

6組み合わせの意味編集部の考察

考察

この組み合わせの要点は、電子地域通貨に必要な「決済の仕組み」と「使える場所と使う人」を、別々の組織が持ち寄ったことにあると考えられます。アイリッジはアプリとQRコード決済の基盤を作り[4][5]、飛騨信組は既存の優待加盟店網を導入の起点にし、窓口でのチャージと説明、加盟店開拓を引き受けました[1][5]。飛騨市の資料は、加盟店開拓やユーザー獲得を「普段取引のある飛騨信用組合」が担い、高齢者にも丁寧に説明したことを利用拡大の理由に挙げています[16]。技術側だけでは店舗と住民に届かず、金融機関だけでは基盤を作れなかったとみられます。

第二の要点は、金融機関が発行主体になったことで、行政サービスとの接続が進んだことです。飛騨信組は高山市と飛騨市の指定金融機関であり[21]、公金の収納、給付金へのプレミアム上乗せ、子育て世帯向けポイント、ふるさと納税の返礼品と、用途が段階的に広がりました[8][12][23][25]。行政は開発・運用コストをかけずに電子的な給付の仕組みを使え、飛騨信組は流通額と新規顧客を得るという双方の利点を、飛騨市自身が挙げています[16]。地域全体と連携した取り組みは、2021年の大臣表彰の選定理由にもなっています[14]。

第三に、スタートアップ側にとっては、最初の実運用の場を得たことが事業展開の土台になったとみられます。アイリッジはこの実績を基に事業を子会社化して飛騨信組を含む出資を受け[7]、基盤を18の自治体・地域に広げたうえで[31]、2025年に事業をTISへ14億5,000万円で譲渡しました[32]。地域の成果と、スタートアップの事業価値の両方を生んだ事例と考えられます。

7他社への応用編集部の考察

考察

この型は、地域金融機関や商工会議所など、地域の事業者と住民に日常的な接点を持つ組織と、決済・アプリの技術を持つスタートアップの共創に応用できると考えられます。同じ基盤は、君津信用組合と木更津市・商工会議所の「アクアコイン」、世田谷区の「せたがやPay」などに広がっています[7][31]。技術側は最初の実運用の場と実績を得られ、地域側は自前では作れない基盤を低コストで使える可能性があります。

成立の条件としては、第一に、地域側が「使える場所」を最初から用意できることです。本事例では既存の優待加盟店網が起点になりました[1][5]。第二に、店舗の負担を抑える設計です。端末不要、初期費用ゼロ、換金手数料1.5%という条件が、カード決済が広がらなかった地域で加盟店を増やしたと担当役員は述べています[6]。第三に、窓口や職員がユーザー登録と説明を担う体制です[16]。第四に、自治体との関係を使って用途を広げることです。公金収納や給付金のプレミアム上乗せは、行政に費用負担を求めずに利用を押し上げ、市民の4人に1人が使う水準につながりました[12][16]。

一方、基盤の提供元であるフィノバレーは2025年にTISの子会社になっており[32]、地域側は基盤企業の資本の変化に備えておくことが望ましいでしょう。また、当初掲げたブロックチェーンの活用は商用化で見送られており[6]、技術の新しさよりも、店舗の手数料と導入の手間、住民への説明体制が普及を左右した可能性があります。年間の決済額や手数料収入は公開されておらず、金融機関側の収益としての評価は難しい点も踏まえる必要があります。

成立に必要な条件

  • 地域側が、優待制度や取引先など「最初から使える場所」となる加盟店網を持っていること[1][5]
  • 端末不要・初期費用ゼロ・低い換金手数料など、店舗の負担を抑えた設計にすること[5][6]
  • 窓口や職員がユーザー登録と説明を担い、高齢者を含む住民に届ける体制があること[16]
  • 自治体の公金収納や給付、ふるさと納税など、行政サービスに接続して用途を広げること[8][12][16][23]
  • 基盤を提供する企業の資本関係が変わる場合に備え、基盤の継続提供の条件を決めておくこと[7][32]

8出典

  1. [1]金融業界初、ブロックチェーン技術を活用した電子地域通貨 地域創生の取り組みとして岐阜県飛騨地域で商用化
    株式会社アイリッジ・飛驒信用組合・プレスリリース・公表日 2016年11月30日・確認日 2026年10月13日
  2. [2]岐阜県・飛驒信用組合の職員を対象に、実証実験を開始 電子地域通貨の商用化に向けた検証フェーズに移行
    株式会社アイリッジ・飛驒信用組合・プレスリリース・公表日 2017年5月15日・確認日 2026年10月13日
  3. [3]2017年7月期 第3四半期 決算説明資料
    株式会社アイリッジ(日本取引所グループの適時開示で確認)・公式サイト・公表日 2017年6月9日・確認日 2026年10月13日・電子地域通貨プラットフォームの取組事例(さるぼぼコイン)と会社の従業員数・業績予想を記載
  4. [4]電子地域通貨「さるぼぼコイン」の実証実験を完了 ブロックチェーン技術も検証
    株式会社アイリッジ・飛驒信用組合・プレスリリース・公表日 2017年10月10日・確認日 2026年10月13日
  5. [5]金融業界初、岐阜県飛騨・高山地域における スマートフォンアプリを活用した電子地域通貨 加盟店 約100店舗から商用化スタート
    株式会社アイリッジ・飛驒信用組合・プレスリリース・公表日 2017年11月21日・確認日 2026年10月13日
  6. [6]飛騨信用組合、電子地域通貨「さるぼぼコイン」で地域経済活性化とキャッシュレス化を推進
    ペイメントナビ(TIプランニング)・取材記事・公表日 2018年3月13日・確認日 2026年10月13日・飛騨信用組合の常務理事・ブランド戦略部長への取材記事
  7. [7]電子地域通貨事業に関する業務・資本提携契約の締結
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2018年6月15日・確認日 2026年10月13日
  8. [8]岐阜県飛騨・高山地域の電子地域通貨「さるぼぼコイン」が飛騨市と連携し市役所窓口手数料支払に対応
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2018年10月1日・確認日 2026年10月13日
  9. [9]岐阜県・飛騨高山地域の電子地域通貨「さるぼぼコイン」が飛騨市の市税等支払いに対応
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2019年2月20日・確認日 2026年10月13日
  10. [10]岐阜県・飛騨高山地域の電子地域通貨「さるぼぼコイン」が高山市の市税等支払いに対応
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2019年7月12日・確認日 2026年10月13日
  11. [11]飛騨高山のさるぼぼコインと木更津市のアクアコイン、全国のセブン銀行ATMからの現金チャージが可能に
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2020年3月26日・確認日 2026年10月13日
  12. [12]1億円規模・最大34%上乗せ 電子地域通貨・さるぼぼコイン、飛騨市民対象のプレミアム電子地域通貨を発行
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2020年5月11日・確認日 2026年10月13日
  13. [13]開始6日間でチャージ総額6,691万円突破 飛騨市民対象のプレミアム電子地域通貨 チャージ期限変更
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2020年5月26日・確認日 2026年10月13日
  14. [14]岐阜県飛騨高山地域のさるぼぼコイン、「地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」で大臣表彰を受賞
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2021年3月31日・確認日 2026年10月13日
  15. [15]観光消費の拡大&観光DXを支援する電子観光クーポン事業岐阜県の「ぎふ旅コイン」に「MoneyEasy」が採用
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2021年10月12日・確認日 2026年10月13日
  16. [16]電子地域通貨「さるぼぼコイン」を活用した、行政サービスの向上及び地元企業の支援(デジ田メニューブック)
    内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局(実施主体:飛騨市)・自治体・公的機関の資料・公表日 不明・確認日 2026年10月13日・数値は2022年4月30日時点
  17. [17]HIDASHIN DISCLOSURE 2023(ディスクロージャー誌)
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2023年7月・確認日 2026年10月13日・令和5年3月31日現在のさるぼぼコインのユーザー数・加盟店数・累計流通額を記載。公表月はPDFの作成日による
  18. [18]HIDASHIN DISCLOSURE 2024(ディスクロージャー誌)
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2024年7月・確認日 2026年10月13日・令和6年3月31日現在の数値を記載。公表月はPDFの作成日による
  19. [19]HIDASHIN DISCLOSURE 2025(ディスクロージャー誌)
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2025年7月・確認日 2026年10月13日・令和7年3月31日現在の数値を記載。公表月はPDFの作成日による
  20. [20]HIDASHIN DISCLOSURE 2026(ディスクロージャー誌)
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2026年7月・確認日 2026年10月13日・令和8年3月31日現在のさるぼぼコインのユーザー数・加盟店数・累計決済金額、組合の概要、地域密着型金融の取組を記載。公表月はPDFの作成日による
  21. [21]組合概要(沿革)
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 不明・確認日 2026年10月13日
  22. [22]さるぼぼコイン|飛騨地域限定の電子地域通貨で暮らしも旅もキャッシュレスに
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 不明・確認日 2026年10月13日・「飛騨地域の約2,000店舗が加盟店」、さるぼぼPay/Bankの違い、払戻手数料を記載
  23. [23]ふるさと納税ポイントの提供開始について
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2023年11月24日・確認日 2026年10月13日
  24. [24]現地決済型ふるさと納税サービスを開始します!
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2024年3月8日・確認日 2026年10月13日
  25. [25]飛騨市子育て世帯応援ポイントの提供開始について
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2024年7月19日・確認日 2026年10月13日
  26. [26]「さるぼぼコイン」8周年記念キャンペーン第3弾の開催について
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2026年3月17日・確認日 2026年10月13日
  27. [27]「高山市暮らし応援商品券」のご利用について
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2026年3月19日・確認日 2026年10月13日
  28. [28]高山市プレミアム付き商品券「さるぼぼコインの商品券」販売開始!
    飛騨信用組合・公式サイト・公表日 2022年7月8日・確認日 2026年10月13日
  29. [29]沿革
    株式会社アイリッジ・公式サイト・公表日 不明・確認日 2026年10月13日
  30. [30]会社概要
    株式会社アイリッジ・公式サイト・公表日 不明・確認日 2026年10月13日
  31. [31]TIS、デジタル地域通貨プラットフォームを提供するフィノバレーの連結子会社化に向けた基本合意書を締結
    TIS株式会社・プレスリリース・公表日 2025年4月25日・確認日 2026年10月13日
  32. [32]TIS、株式会社フィノバレーを完全子会社化
    TIS株式会社・プレスリリース・公表日 2025年7月1日・確認日 2026年10月13日
  33. [33]高山市・飛騨市の返礼品に「ふるさと納税ポイント」提供(飛騨信用組合)
    ペイメントナビ(TIプランニング)・取材記事・公表日 2023年11月28日・確認日 2026年10月13日・後半は会員限定で未確認。飛騨信用組合の発表に基づく記事
  34. [34]フィノバレーが君津信用組合を割当先として、第三者割当増資を実施
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2020年2月4日・確認日 2026年10月13日
  35. [35]フィノバレーが三菱電機とデジタル地域通貨事業 及び スマートシティ/スーパーシティ事業に関する資本業務提携を実施
    株式会社アイリッジ・プレスリリース・公表日 2022年1月28日・確認日 2026年10月13日

公表日は出典の掲載日、確認日は編集部が内容を確認した日です。出来事の日付は本文に記載しています。

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